今年はどんな相手でも「粘り強くやれる」チーム。遠野が延長戦で盛岡中央を振り切り、2連覇と県3冠に王手:岩手
[10.27 選手権岩手県予選準決勝 遠野高 3-1(延長)盛岡中央高 いわスタ] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 名門・遠野が逆境力と粘り強さを発揮し、決勝進出を果たした。第103回全国高校サッカー選手権岩手県予選準決勝が30日に盛岡市のいわぎんスタジアムで行われ、遠野高と盛岡中央高が対戦。延長戦で2得点を挙げた遠野が3-1で勝った。遠野は11月3日の決勝で専修大北上高と戦う。 今年のチームは県新人戦、インターハイ県予選で優勝し、夏の東北大会で2連覇。2年連続31回目の選手権出場と県3冠を狙う遠野の先発は、GKが田代謙真(3年)で、DFは右から野崎翔愛(3年)、菊池晃太(3年)、谷地稜生(3年)、田中空(1年)の4バック。中盤は今淵雄太郎(3年)と馬場大瀬主将(3年)のダブルボランチで右SH細谷地亮介(3年)、左SH小倉悠慎(3年)、前線で照井颯人(3年)と宇夫方崇太(2年)がコンビを組んだ。 一方の盛岡中央は、前回大会の準決勝で敗れている遠野とのリベンジマッチ。GK湯澤冴心(3年)、右SB工藤率(3年)、CB天江亮惺((3年)、CB礒部裕介主将(3年)、左SB工藤心眞(3年)、ダブルボランチが橋本瑛翔(3年)と石崎源斗(3年)、右SH吉田俊太(3年)、左SH立柳恒河(3年)、そしてFW立花快斗(3年)と片岸礼(2年)の11人が先発した。 前半6分、遠野は馬場のスルーパスに照井が反応。これは相手CB礒部のタックルに止められたが、直後にも今淵の左CKを照井が頭で狙う。前半、シンプルに相手CBの裏を取りに行った遠野に対し、盛岡中央はGK湯澤やCB礒部が守備範囲広く守るなど対抗。そして、FW立花への縦パスからハイサイドを狙う攻撃で攻め返した。 ボールを保持しながらの攻撃を特長とする遠野にとっては、狙いとは異なる前半の戦いに。野崎、田中の両SBが高い位置で攻撃に係わろうとし、右の細谷地がスピードを活かしたドリブル突破からクロスへ持ち込んだほか、馬場や今淵がスルーパスを狙うシーンもあった。だが、同サイドで圧縮してくる相手のプレッシングに慌ててしまうようなシーンの連続。右FKから宇夫方の放ったヘッドを除くと、シュートまで持ち込むことができなかった。 体調不良の工藤竜也監督に代わって遠野の指揮を執った内田和茂部長は、「準々決勝まで点差がついてるゲームで、苦しいゲームをやってこなかったので、緊張というか、気持ちの部分でも彼らが自信持ってやれないところはあって。蹴り合いになるだろうなっていうところは予想していました」と振り返る。前半38分には馬場の強烈な右足ミドルが枠を捉えたが、盛岡中央GK湯澤がキャッチ。前半を0-0で折り返した。 迎えた後半開始直後、盛岡中央が先制点を奪う。3分、左の立柳へパスが通り、そこから前を向いた片岸がドリブルから思い切り良く右足ミドル。DFの死角となったか、GKが反応できず、シュートは左隅に決まった。名門からの先制点に大興奮の盛岡中央スタンドと選手たち。遠野は直後に右クロスに照井が反応し、こぼれ球を小倉が押し込むもオフサイドの判定で同点に追いつくことができない。 その遠野は6分、田中と宇夫方を左SB今野友生(3年)、MF福田心(3年)へスイッチ。一方の盛岡中央は、吉田の縦突破や前線で存在感を放つ立花のシュートでスタンドをまた盛り上げる。 だが、遠野は相手の勢いに呑まれなかった。馬場は「失点すると気持ち的に僕もガクッと来ましたし。ただ、失点しても逆転する力っていうのは東北総体とか、色々なところでつけてきたんで、『焦んな』『絶対行けるから』って自分と照井が特に声を掛けていました」。また、今淵が「今年も東北総体で優勝して、特に仙台育英戦なんかは今日みたいに先制点を取られての逆転勝利だったので、そこは試合前も『失点しても切り替えてやろう』っていう風に話してたんで、それが上手くできたんで良かったです」と語ったように、名門校は逆境での強さを発揮した。 遠野は13分、細谷地をMF千葉陸(2年)と交代。盛岡中央も工藤心をDF高村大智(3年)と入れ替えた。すると15分、遠野は馬場のパスから左の小倉が鋭いステップのドリブルから左足シュート。これをゴール右隅に突き刺し、同点に追いついた。 ここまで先発を外れていた小倉だが、「気持ちのところを買ってスタメンで使って期待に応えてくれた」(内田部長)という活躍。遠野はこの後、相手の裏抜けやミドルシュートでゴールに迫られたものの、182cmCB菊池晃のカバーリングや的確なポジショニングでのクリア、また谷地のハードワーク、加えて184cmGK田代が高さを発揮するなど2点目を許さない。 また、後半にボールの動きが出た遠野は、最前線の照井が収めて仕掛ける回数を増やす。盛岡中央がMF鈴木翔叶(3年)、DF高田龍輝(3年)、FW金子卓実(3年)を投入し、遠野がFW菊池希瑠(1年)を起用して迎えた後半終盤、遠野は馬場のスルーパスなどから勝ち越しのチャンス。だが、決め切ることができず、試合は延長戦へ突入した。 延長前半開始20秒、遠野が勝ち越し点を挙げる。野崎のパスから菊池希が右サイドを抜け出し、マイナスのラストパス。ニアでスルーした選手の後方へ走り込んだ今淵が右足ダイレクトでゴールを破った。 遠野の内田部長は「1年生の(菊池)希瑠が特長のある選手なので。(後半は)入って縦に仕掛けられないところがあったので、『自信持って縦、勝負しろ』と。ずっとクロスからシュートのところを意識して準決勝に向けてトレーニングしていて、その狙いが上手く出せたかなと。あとは選手たちが自信を持って積み上げてきたことを出してくれたかなって思います」と微笑んだ。 盛岡中央は最終ラインで礒部とともに奮闘していた天江を前線へ上げて反撃。だが、遠野は延長後半8分、相手GKのクリアミスから敵陣中央の照井がロングシュートを狙う。ゴールを確信して右手を突き上げると、ボールはそのままゴールイン。この後、遠野はMF青山唯斗(3年)を加えて試合を締め、3-1で勝利した。 遠野は昨夏の東北大会で尚志高(福島)や青森山田高(青森)を破って19年ぶりの優勝。また、選手権ではプレミアリーグ勢の大津相手にドリブル、ショートパスを駆使した戦いで渡り合い、0-1の接戦を演じている。 主力の多くが卒業したが、今夏も東北制覇。内田部長は「どういう相手でも粘り強くやれるかなっていうのは今年の特長だと思います。プレミアのチームとかでも、フィジカルのところでしっかり負けない、足運んでついていくっていうところは去年よりは特長があるんじゃないかなと思います」というチームはこの日、苦しい試合展開でも粘り強く戦い、白星を勝ち取った。馬場は「決勝はどんな形であれ必ず勝って、全国の出場の切符を掴みたいなと思います」。今年のチームの強みをしっかりと表現し、選手権予選も連覇を果たす。