野武士を思わす轟音に思わず耳を疑った! 先代フェアレディZは、どんな日産車だったのか?【エンジン・アーカイブ蔵出しシリーズ】
Z34系は意外と魅力的かも!?
ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年の3月号に掲載された日産フェアレディZのリポートを取り上げる。巷ではようやく現行Zの納車が報告をちらほらと聞くようになったが、現行型のベースとなっているのはこの先代モデルである。復活する日産を象徴的に印象付けた先先代のフェアレディZ。その後を継いだ先代は、本物のスポーツカーであることを最大の目標に掲げて開発されていた。果たしてその真価は? 【写真6枚】日産フェアレディZの先代モデルのロードインプレッション 詳細画像はこちら ◆タイトでスポーティ 新型Zは、実物を陽の光の下で見ると、予期した以上に素敵だった。シャープでパワフル。精悍といえばいいのか。ホイールベースを縮めたのが、スタイリングに大きく効いている。間延びした部分がなくなり、ギュッと凝縮された感じがする。 サイズのわりに重々しさを感じさせないドアを開けて乗り込むと、また嬉しくなる。全社挙げてのコストダウン期に開発された先代Zはインテリアの質感が今一歩だった。意匠のほうも変革期の苦しみが見て取れるものだった。フェアレディという名に期待される域になかったと思う。 それがどうだろう。新型はインテリアがエクステリアにもまして魅力的になっている。初代Zを連想させるモチーフを取り入れながら、適度にオーガニックなラインを使って構築されたダッシュボードは、空間を無駄につぶしている感じが微塵もない。タイトでスポーティだ。 メーター・ナセルごと上下するステアリング・コラムを調整して、しかる後にシート・スライドとバックレスト角度を調整すると、まるであつらえたかのようにピタッとポジションが決まった。これだけでも嬉しくなるのに、座部の角度調整まで合わせ込める。イニシャルの座面傾斜角もいいところにある。 と、ショルダー・サポートがじつにしっくりといい感じなのに気づいた。痩身の僕でさえ、ブカブカと空間が余ったりせず、ソフトに包むように支えてくれる。このドライビング環境は、近年接した日本車のなかでは間違いなくベストだ。物の分かったひとが開発ティームにいないと、決してこういうものにはならない。 ◆あえて咆哮と呼びたい轟き 走り始め、ほどなくオープン・ロードに出て右足を深く踏み込むと、轟音が耳を襲った。「え!?」と一瞬、気圧されそうになった。気を取り直してふたたび踏み込むと、室内にエンジンの透過音と排気音が渾然となって充満した。豪の者。日産の根の部分に残る野武士的な気性を思い起こさせるような音だ。快いサウンドだけを欲する軟弱な耳には、強すぎるほどの音といえるかもしれない。 けれど、冷静に観察すると、全域でトルキーな3.7リッターエンジンは、トップエンドまでスムーズだし、トランスミッションも雑な振動を伴っているわけでは全然ない。日産の大排気量エンジン用マニュアル・ギアボックスとしては、滑らかさ、操作感の良さも過去最良といっていい。十分に洗練されている。 シャシーのデキもいい。ステアリングは適切な重みをもち、操舵力、保舵力ともにじつにいい感じだ。パワーアシストに不自然な感触は皆無。ハンドリングにしても、ナチュラルでリニアというに尽きる。ショート・ホイールベース化と、リアのワイド・トレッド化がアンダーステア傾向を首尾よく押さえ込んだのだろう。優れた素性を備えているのが短時間の試乗でもありありとわかる。だから、状況によっては電子制御の車輌安定化システムが忙しく働いているのが分かっても、それをイヤとは感じない。間口を広げて懐を深くするのに役立っていると思うからだ。基本を固めてハイテクで援護するという理想的なかたちがここにはある。 新型Zは、まちがいなく、本物だ。 文=齋藤浩之(本誌) 写真=小野一秋 (ENGINE2009年3月号)
ENGINE編集部
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