『交通事故鑑定人 環倫一郎』で人気のクルマ好き漫画家・樹崎聖の『オートモビルカウンシル2024』見聞録「前編:なにはなくともガンディーニ追悼」
自動車評論家の故・川上完さんの愛車をきっかけにブリストルの取り扱いを開始した「ブリストル研究所」
アルヴィス・ジャパンのブースを離れた筆者と樹崎さんは、隣接するブースに目を向けたところ見慣れないクルマが展示されていることに気がついた。「このクルマは何?」と樹崎さんが聞くので「ブリストルですよ」と筆者は答えた。出展社名を見ると「M&K Wakui ブリストル研究所」とあり、同社の代表としてブースにいたのは、埼玉県加須市にて「くるま道楽」の屋号でロールスロイス&ベントレーの専門店を営む涌井清春さんだった。 久しぶりに会った涌井さんに詳しく話を聞くと、2014年に亡くなった自動車評論家の故・川上完さんが生前愛用していたブリストル406をご家族の意向で引き受けたことがきっかけとなり、ブリストルの魅力にあらためて気づき、このクルマを掘り下げてみたいとの思いから「ブリストル研究所」を立ち上げたという(ブリストルについてはあらためて紹介したい)。 ブースに陳列されていたクルマは1949年型ブリストル400、1953年型ブリストル401、1960年型ブリストル406、1968年型ブリストル410の4台だ。このうちブリストル400は無塗装のベアメタル状態での展示となる。このクルマのボンネットやフェンダーなどのパネルには、ハンマーのあとがありありと残っており、職人がボディパネルのひとつひとつをアルミ板から叩き出しで作ったことがひと目でわかる。 製造元のブリストル・カーズは、第二次世界大戦後に航空機製造のブリストル・エアプレーンから派生した自動車メーカーで、飛行機屋が作ったクルマらしく空力を強く意識した流線型のスタイリングが特徴となっているのだが、これらは同社の持つ航空機製造で培った技術と熟練した職人の手腕による成果だ。樹崎さんにブリストルの成り立ちを簡単に説明すると、興味深そうにブリストル400のボディパネルを観察していた。
プジョーファンの駆け込み寺として知られる東京都江戸川区の原工房ブースでのクルマ談義
ブリストル研究所をあとにした筆者と樹崎さんはしばらく会場の練り歩きを楽しんだ。会場には内外の様々な珍しいクルマが並んでいる。だが、樹崎さんの興味は国産旧車や欧州車にあるようで、ミントコンディションの1970年型ダッジ・チャレンジャーR/T440+6コンバーチブルや1963年型シボレー・コルベットC2の前は華麗にスルー。「興味ないの?」と聞くと「アメ車はあまり好みではないんですよ」と樹崎さん。 そう言えば彼の代表作である『交通事故鑑定人 環倫一郎』は北米が舞台にもかかわらず、アメリカ車よりも欧州車や日本車が活躍していたような気が……。樹崎さんは筆者の顔を見て察するものがあったのだろう。 「劇中で北米では販売されていない車種が多く登場するのはボクの好みを反映させた結果です。主人公の乗るアルファロメオ156は、北米市場で販売されていないことを承知で登場させました。アレは連載当時、ボクが欲しかったクルマで、のちに本当に買っちゃったクルマですからね。まあ、漫画の世界は自由ですから」と笑顔で語る。 そうこうしているうちにプジョーオーナーの間で「困ったときの駆け込み寺」として知られる東京都江戸川区に店を構える『原工房』のブースの前に来ていた。このショップはプジョーのスペシャルショップとしてつとに有名だが、じつはシトロエンやルノーなどフランス車全般に対応してくれる。 今回同店が出展したのは、気がつけばヤングタイマーの仲間入りを果たしていたグッドコンディションの2台のプジョー406クーペだ。 ブース内に目をやると社長の原誠二さんがいたので、新たにフランス車オーナーとなった樹崎さんを紹介する。すると「時間があるならお茶でも飲んで行ってよ」と人懐っこい笑顔で原さんからお誘いを受けたので、お言葉に甘えてごちそうになる。そこで暫しの間3人でクルマ談義。あいかわらず原さんの話は面白い(リポートは次回に続く)。
山崎 龍
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