『交通事故鑑定人 環倫一郎』で人気のクルマ好き漫画家・樹崎聖の『オートモビルカウンシル2024』見聞録「前編:なにはなくともガンディーニ追悼」
現代に復活したアルヴィスのコクピットに収まり往年の名車が醸し出す独特な世界観に浸る
ガンディーニ追悼展を堪能した筆者と樹崎さんは、続いてすぐ近くのアルヴィスブースに足を向けた。アルヴィスと言えば技術志向の強いメーカーとして、イギリス車で始めて独立懸架サスペンションや前輪駆動、イナーシャーロック式フルシンクロメッシュ・トランスミッションを採油したメーカーである。自動車黎明期から1960年代中頃まで高級車を中心にリリースしていたが、ローバーによる資本参加を経て親会社が国営企業のブリティッシュ・レイランドに参加したことで乗用車生産から撤退。以降は軍用車メーカーとして存続したものの、2004年にBAEシステムズの傘下に入ったことで、BAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツへと改組され、同ブランドは一時消滅した。 そんなアルヴィスが復活したのは2012年のことだ。戦前にデビューしたアルヴィス4.3はイギリス当局から150台の製造認証を受けていたが、戦争の影響で1940年までにラインオフした車両は73台に留まった。残りの77台に関してはシャシーナンバーが割り振られたまま生産されずに宙に浮いていたわけで、新生アルヴィスは「コンティニュエーションシリーズ」と銘打って、このシャシー・ナンバーを利用して新規生産することを目的に復活したのだ。同時に同じように規定生産台数を満たしていないアルヴィス3.0の生産、そして自社がリリースした過去作のレストアやパーツ供給も行っている。 日本法人の「アルヴィス・ジャパン」(明治産業)は、 2023年のオートモビルカウンシルでは、96年ぶりに日の目を見た1927年型アルヴィスFWDストレート8グランプリ・カーを展示していたが、今年の展示はロードゴーイングカーのみ。会場に持ち込まれた車両は、日本初上陸となるアルヴィス3.0グラバー・スーパーカブリオレのほか、3.0グラバー・スーパークーペと4.3ヴァンデンプラ・ツアラーの3台で、いずれもコンティニュエーションシリーズだ。イギリスのクラフツマンシップで現代に蘇ったアルヴィスは、まさしく「新車のクラシックカー」で、どの車両も美しくも気高く、そこにあるだけで気分が華やぐ。 樹崎さんにとってイギリスの高級サルーンは興味の対象外だったらしいのだが、簡単にアルヴィスの概要を説明すると「クラシックカーなのに新車なんですか? しかも、当時の保安基準のままで再生産が可能なんですか!? 自動車文化が盛んなイギリスらしいというか、それは面白い話ですね」と好奇心がふつふつと湧いてきた様子。 昨年の取材で挨拶を交わしたアルヴィス・ジャパンの広報担当に樹崎さんを紹介すると、快くドライバーズシートに案内される。「これは本当に素晴らしいですね。まさにイギリスの古き良き高級車の世界です」と車内に収まった樹崎さんはご満悦な様子。「樹崎さん、1台いかがですか? 仕様にもよりますが、6000~7000万円ほどでお買い求め頂けますよ」と冗談めかしていったところ「どこにそんなカネがあるんですか!」と間髪入れずに返ってくる。
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