【学生長距離Close-upインタビュー】悔しさ糧に成長した中央学大・近田陽路 「全員がいい記録を出せるチームに」
「自分だけが落ち込んでいるわけにはいかなかった」
箱根以降、近田は自分を見つめ直した。自覚した弱さ、大舞台で力を発揮する選手との違い。「今やらなければならないことは何か」。 まずは走行距離を伸ばした。ポイント練習も、ジョグも、何かしらプラスすることを心掛けた。補強も工夫した。新体制で副キャプテンとなり、自分だけが落ち込んでいるわけにはいかなかった。 成果はすぐに表れた。2月4日の丸亀国際ハーフで1時間2分08秒の自己新、そして3月10日の日本学生ハーフ。優勝した國學院大の青木瑠郁(3年)に抜け出されたものの、2位集団につけた近田は残り1㎞からロングスパートを仕掛ける。早大の工藤慎作(2年)、中大の白川陽大(3年)、國學院大の辻原輝(2年)らを振り切り、1時間2分19秒で2位。周囲を驚かせた。 「近田みたいに距離を増やしたら強くなるぞ」 レース後、川崎監督はそうチームを奮い立たせた。箱根以降の近田の取り組みを指揮官は注視。今季は全日本選考会、箱根予選会ともにトップ通過という目標を持つチームの見本となるようになった。 愛知県豊橋市生まれで、走り始めたのは小学校1年生の時。持久走大会で1位になり、「長距離が向いているかも」と思ったのがきっかけだった。 「本気でやるなら」、と地元のランニングクラブ「TTランナーズ」に入った。近藤幸太郎(現・SGホールディングス)、吉居大和(現・トヨタ自動車)らも所属していたクラブで、近田は走ることを子どもの頃から楽しんでいた。 愛知・豊橋羽田中での3000m自己記録は9分17秒39。東三河地区の同学年には吉居駿恭(田原東部中、現・中大3年)がおり、中3時の記録は8分29秒64で全国ランキング2位だった。吉居駿もTTランナーズ出身だが、「格が違った。比べるどころではなかった」と近田。周りより速く走れるようになろうと、必死に練習に励んでいた。 愛知・豊川高に進むと、2、3年時に全国高校駅伝に出場。強豪校で普段から力のある選手と練習を積み重ねるなか、中央学大の川崎監督が近田の走りに目を付けた。 「いいフォームをしている。強くなるよ」 5000mの自己記録は14分23秒77で、当時の高校100傑にも入っていなかったが、「この監督のチームで戦いたい」と進学を決めた。