捕手としてCS突破に貢献した戸柱（右）は三浦監督と抱擁した（撮影・今野顕）

（JERA　クライマックスシリーズ　セ　ファイナルステージ、巨人2－3DeNA、第6戦、DeNA4勝3敗、21日、東京D）日本シリーズ進出を決めたDeNAの躍進を支えたのは、攻守で貢献した34歳の戸柱恭孝捕手だった。クライマックスシリーズ（CS）では21日の巨人とのファイナルステージ第6戦を含め、出場した全7試合で安打を放ち、打率・346、1本塁打、6打点。守っては巧みなリードで投手陣の好投を演出し、最優秀選手（MVP）に輝いた。レギュラーシーズンの出場こそ46試合にとどまったが、豊富な経験と周到な準備で欠かせぬピースとなった。 【写真】MVPの戸柱恭孝はボードを掲げポーズ「野球人としてすごい成長できると思えたCSでした」 戸柱の存在なくして、DeNAの躍進はなかった。最後の打者・岡本和を打ち取ると、マウンドの森原と抱き合った。MVPに輝き、賞金200万円（大会冠協賛社JERAの100万円を含む）を獲得。「ほっとしたというのが一番。僕だけの力ではなく投手がよく投げてくれた」とほほ笑んだ。 攻守で成長を見せた26歳の山本が正捕手に定着。入団9年目の34歳を突き動かしたのは、ベイスターズを勝たせたいという一心だった。昨オフには悩んだ末、国内FA権を行使せず残留。「残ると決めたからにはチームのために全力でやる」と身をささげてきた。 今季の出場は46試合。試合勘の維持は難しく「状態が分からないこともあった」という。それでも下を向かず、ベンチでは自軍の配球を見つめ「こう攻めたら面白そうだなと。新たな発見もあった」と打ち明ける。 特筆すべきは大貫と組んだ巨人との第2戦だ。レギュラーシーズンでは5％ほどだったツーシームの割合を約20％に増やし、カットボールも多投。手元で動く軌道を打者に意識させ、七回途中1失点の好投を演出した。ファイナルステージの49奪三振中20個が見逃し。配球で翻弄した。 第3戦に先発した2年目の吉野には「自分のスタイルを大事にして投げ込んでこい。あとは俺が責任を持つ」と背中を押した。今季と同様にリーグ3位から日本シリーズまで勝ち上がった2017年を経験した数少ない選手の一人として精神的支柱の役割も果たし、三浦監督は「準備してきたからこそ今がある」と目を細めた。 山本と伊藤が負傷離脱した中、改めて示した存在感。「前回（17年）は2年目で周りが見えていなかった。今回は全体が見えている」。その表情に充実感がにじんだ。（鈴木智紘）