迫りくる死の影...「陰部露出」で昭和を彩った伝説のストリッパー・一条さゆりが”生活保護受給者”へ転落するまで
止まらない糖尿の進行
体調が思わしくないのか、このころから彼女の話に、「死」に関する言葉が増えていく。 しばらく間が空いた。久しぶりに訪ねると、一条は部屋で横になっていた。私のすぐ後に加藤がやってきた。一条は身体を上げると、加藤に缶コーヒーを買いに行くよう伝え、小さな小銭入れから500円硬貨を手渡した。缶コーヒーは私に飲ませる分だった。 「この間、歯医者でいっぺんに3本抜いたんよ。ちょっときついわ。先生に『もうちょっとやから抜いちゃお』って言われた」 「歯が悪いんですか」 「もう10本くらいしか残っていない。こんなに抜かれたらきついわ。自分の身体がこんなん(糖尿)でしょう。身体は相変わらずやし、足がちょっと重い」 糖尿の進行を抑えるよう心がけているという。
絶えない苦労話
「朝は散歩するようにしてる。先生(医師)からは、歩け、とにかく歩かなあかんって言われている」 一条はこのころ、ほとんど釜ケ崎周辺から出ていなかった。買い物も治療もこの付近で済ませていた。キタやミナミの繁華街まで出掛ける体力、気力がないのだ。 「それでも先日、詩ちゃんと2人で扇町まで行きました」 和歌山刑務所から出た直後に彼女がスナックとクラブを開いた場所である。 「踊りをやめて、食べていけなくて、キャバレー回りしたり、ホステスしたりして。そんなとき、屋台くらいやってみようかなと思ったんよ。(扇町)末広町の加藤重三郎さんの扇広ビルで店を開いた。そのビルを詩ちゃんと見にいった」 あいにく彼女は加藤重三郎には会えなかった。
小倉 孝保(ノンフィクション作家)
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