迫りくる死の影...「陰部露出」で昭和を彩った伝説のストリッパー・一条さゆりが”生活保護受給者”へ転落するまで
「とにかく長生きしてくれ」
一条は楽屋話のように、「山田」について語って聞かせる。 「その山田さんは、『一条さゆりは屋台にいる』と聞いて釜ケ崎まで来たんやって。それで屋台であたしについて聞いたら、『一条さゆりはこの前まで元気やったけど、もう死んだ』って言われたんやて。『話を聞きたいんやったら、1杯飲んでいけって言われた』って」 この男性からは、とにかく長生きしてくれと頼まれたらしい。 「その人が言うの。『自分が料理屋やるようになったら、迎えに来るから。死んだらあかんで。おカネためて迎えに来るから、死んだらあかんで』って」 楽屋話はいつの間にか、別の男性の話題に移っている。以前、付き合っていた男が借金を返せなくなったため、消費者金融業者が自分のところへ取り立てに来たというのだ。
“関係”を持った数多の男たち
「(借金したのは)一寸法師みたいに小さな男で、私の頭までしかない。利息のつくカネばかり借りて、返せない」 話題がころころと変わるため、ついていくのに苦労する。 「今はよう肥えた女と付き合っているらしいけど。その男がカネを借りるとき、『一条さゆりは自分の女や』って言ったらしい。だから(取り立て業者が)来たんよ」 一条は生活保護を受けながら生活している。保証人になったわけでもない。消費者金融業者もそんな彼女から債権を回収しようとするだろうか。適当に聞き流していると、彼女の話はどんどん続いていく。 「サラ金からチンピラが取り立てに来てね。そりゃ、怖いわよ。チンピラは釜ケ崎にいる男。稲垣さんのところにも来て、『一条の生活保護費からカネを返せ』って言ったらしい。稲垣さんは、『他人が勝手にいじれない』って追い返してくれた。その男はいつも犬を3、4匹連れているの。あたしに文句言っても、知らんわよ」 この日はなぜか、こうした男性との話が多かった。
「おカネためて迎えに来るから、死んだらあかん」
一条は「山田」がホテルに宿泊していると言った。私は後で、そのホテルに問い合わせた。当然ながら「山田」はいなかった。私もそんな男がいるとは思っていなかった。釜ケ崎のホテルに宿泊しながら、大阪で板前修業するとはおかしいように思えた。普通、アパートなどを借りるだろう。 細部を詰めれば、彼女の話はつじつまの合わないことばかりだ。ただ、楽しそうに話す彼女を前に、途中で話を遮り、細部を確認するような野暮なやり方はしたくなかった。 一条はこの日、なぜか最後まで、私が渡したお茶の栓を開けなかった。夕食用に残しているのだろうかと思った。私が帰りかけると、一条は「ご苦労さま、ご苦労さま」とねぎらった。 釜ケ崎を歩きながら、「山田」という男について一条の語った言葉が思い出された。 「おカネためて迎えに来るから、死んだらあかん」 そうした男性の出現を一条は期待していたのだろうか。
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