不動産のプロが教える「マンションを高く売却できる人」がやっていること
マンションの価格高騰が止まらず、都心のマンションを中心にバブル期超えの最高値を更新している。しかしその中でも、資産性を維持できる「選ばれるマンション」と資産性を落とす「選ばれないマンション」の物件格差がかつてないほど広がっているという。本稿では、マンションを高く売却するためのポイントを、書籍『マンションバブル41の落とし穴』より紹介する。 【解説】都心のワンルーム物件が投資初心者に向いている理由 ※本稿は、長嶋修著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
マンションの「終活」はまだまだ先のこと?
今のマンションは、未来永劫建て替えたり解体したりしないという前提で超長期の修繕積立計画を立てるのが良しとされています。実際、長期的な目線で計画をすることは重要ですし、鉄筋コンクリート造の建物は定期的に修繕を繰り返すことで、築100年以上になっても延命できるでしょう。 ただ、現実問題として日本に築100年を超えるマンションはなく、古い集合住宅は建て替えや解体が実施されています。よって、お手本にできるようなモデルケースはありません。 マンションが古くなるとともに、住民も高齢化します。世代交代をしながら住み継がれるマンションもあり、それは一つの理想形と言えますが、どのマンションにも次々と若い世代が入ってきてくれるわけではありません。現実には建物も住民も同時に老いていくマンションのほうが圧倒的に多いのです。 高齢者ばかりのマンションでは、管理組合の機能がおのずと低下していきます。滋賀県野洲市では、築50年近い鉄骨造の分譲マンション(全9戸)が廃墟化。長年にわたって住人は一人もおらず、建物は老朽化が進み、壁などの剥落で事故が起きることや、アスベストの飛散などが危ぶまれていました。 野洲市はこのマンションの区分所有者に解体要請を出しましたが、解体費用は1戸あたり約1300万円と高額で、実際に回収できたのは3戸分のみ。残りは市が公金を投じ、「空き家対策特別措置法」に基づく行政代執行によって解体を終えています。 このような事例は今後増加する可能性が高いでしょう。マンションの老いを止められず、費用面から建て替えも難しいとなったとき、一体どのような出口に向かっていくのがベストなのでしょうか。 考え得るのは、一定の期間でマンションを解体することを決めておき、解体後は敷地を売却して、それを区分所有者に分配するというやり方です。区分所有者はそのお金を手にして、別のところ(老人ホームなど)に住み替えることができます。 たとえば、「竣工から60年後に解体する」と決めたとします。築60年目の出口までに管理組合がやるべきことは、それまで安全に生活するための長期修繕計画を立てること。その点は、期限を決めていないマンションと何ら変わりませんが、工事に対する考え方は多少変わるはずです。 仮に18年周期で大規模修繕工事を行うとして、通常だと3回目あたり(築54年目)の修繕は、かなり大がかりになることが予想されます。しかし、60年で解体するというゴールが決まっていたとしたら、あと6年持たせればいいだけなので、そこまでお金をかけた工事をする必要がありません。そのため、修繕積立金を合理的に削減することができます。 一方で、修繕積立金とともに「解体積立金」を少額ずつ貯めておく必要はあります。定期借地権のマンションだと、借地期間満了時に更地で返すために解体積立金を貯めておくので、これと似たようなイメージです。 このような取り組みを検討している管理組合はまだほとんどありませんが、人口が減少しているのに住宅の供給は続き、空き家問題が深刻化している今、このような選択が今後ポピュラーになってくる可能性は十分にあります。 マンションを解体した跡地はかなりの広さになるので、ホテルやオフィスビル、学校などの建設用地として買い取られることもあるでしょう。旧耐震の時代に建てられた古い物件は、都心の好立地に建てられているケースも多いため、更地にして土地を売却することで、利益を得られるかもしれません。 ただ、日本の不動産価格は三極化が進んでいるため、郊外の駅からも遠い場所となると、土地価格が大幅に下落し、解体して敷地を売却しようにも売れない、もしくは安値しかつかない可能性も高くなります。そうなると、住む家がなくなり、住み替えるお金も手にできなくなってしまう人が出てくるという問題はあります。 しかし、最近では国もマンションの老朽化問題に向き合っています。このような形のマンションの「終活」を根付かせるため、法令の改正や補助制度などを整備していくことも考えられるでしょう。