年齢制限で新人王は逃したベストイレブン、武藤の次なる夢とは?
最終的にはJリーグの歴代新人最多記録に並ぶ13ゴールをマーク。キャリアパスを楽々とクリアした一方で、大きな誤算が発覚する。ゴールを量産しはじめたころに、武藤がチーム関係者にポロリと漏らした。 「新人王、いけるかもしれない」 すると、思ってもいなかった言葉が返ってくる。 「実は(資格が)なかったと言われて。これはベストイレブンか、得点王を狙うしかないと頑張りました」 ベストヤングプレーヤー賞と名称があらためられて以降は、受賞者に年齢制限が設けられた。2014年シーズンは「1993年4月2日以降」に生まれた選手であり、1992年7月15日生まれの武藤は対象外だった。 もっとも、ベストヤングプレーヤー賞を受賞したMFカイオ(鹿島アントラーズ)は、MVPとベストイレブンの対象となる31人の優秀選手賞には選出されていない。ルーキーで唯一名前を連ねた武藤が、真の意味でのナンバーワンルーキーと言っていい。 「すごいことをやったとは思いませんけど、頑張ったんじゃないかな。普段は自分のことをほめませんけど、大きなけがもなく1年を過ごすことができたので、しっかりと自分をほめてあげて、それでも満足することなく来年は自分に鞭を打って。さらに活躍できるように、さらに上手くなりたい」 ハビエル・アギーレ監督に率いられる日本代表入りも早々にかなえた武藤だが、夏場に提出したキャリアパスには中期的な目標も記されていた。 「2年後には海外でプレーしている」 横浜アリーナの2階に設けられた取材スペースを去る直前にその点をぶつけると、輝く笑顔とともにこんな言葉が返ってきた。 「途絶えていないです。(海外に)いきたいと思います!」 アギーレジャパンの第1号ゴールを決めるなど、センセーショナルな軌跡を刻んだものの、シーズンの深まりとともにコンディションを落とした。それでも歯を食いしばって初体験のJ1を戦い抜いたいま、さらなる飛躍のためにクリアすべきハードルが武藤にはしっかりと見えている。 「ひとつひとつのスキルもそうですし、フィジカル、テクニック、メンタルとすべての面においてワンランク、ツーランク成長しないといけない。オフもしっかりとトレーニングをしながら、休むべきところはしっかりと休んで、(アジアカップ代表に)選ばれたら最高のパフォーマンスを見せられるようにしたい」 やむをえない事情で新人王がベストイレブンに代わったものの、それでも短期的な目標を完璧にクリアしたプロ1年目。すでに大学卒業に必要な単位も取得済みで、2015年からはプロ一本での勝負が始まる。自らの意志で切り開いていく道の先に何が待っているのか。答えは武藤だけが知っている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)