「親知らずが突然痛み出した…」原因や対処法、抜歯のアリ・ナシを歯科医が解説
親知らずの痛みが出たらすぐに抜くべき? 抜歯する・しないの判断基準や注意点について
編集部: 親知らずの痛みがでたら、やはり「抜歯」しか治す方法はないのでしょうか? 藤井先生: ケースバイケースで、必ずしも「抜かなければならない」というわけではありません。レントゲンを撮って明らかに大きなむし歯や病巣がある場合は、基本的に抜いた方がいいと思います。ただし、親知らずが一時的に痛むこともあるので、そういう場合は定期的なケアをしながら管理するという方法もあります。 編集部: 痛みが出たからといって「絶対に抜歯」というわけでもないのですね。 藤井先生: はい。ただし、親知らずは一度症状が出ると再発しやすい傾向があるので、痛みや腫れを繰り返す場合は、抜歯をした方がいいケースもあります。 編集部: 親知らずが痛くて歯科医院を受診した場合、当日に抜いてもらうことはできるのでしょうか? 藤井先生: これも状況次第ですね。痛みや腫れがひどい場合は麻酔も効きにくいですし、すぐに抜歯すると治りが悪いこともあります。また、親知らずの埋まり具合や根っこの状態によっては、すぐには抜けないことも少なくありません。したがって、来院当日は炎症を取り除く処置をおこない、炎症が落ち着いてから後日抜歯するというケースが多いと思います。 編集部: 親知らずの抜歯に際して、注意しておきたいことはありますか? 藤井先生: 抜歯当日は、できるだけ空腹を避けるようにしてください。また、抜歯してから次の日までは出血しやすいため、激しい運動など血流が良くなることは極力控えた方がいいでしょう。抜くときに骨を削ったり、歯を分割したりするような複雑な抜歯では、術後2~3日をピークに腫れが出やすくなります。可能であれば1週間ほど余裕をみて、抜歯のスケジュールを立てることをおすすめします。
痛みがなくなっても放置は危険? 親知らずを放置するリスクとは
編集部: 痛みが消えた後に親知らずを放置した場合、どのようなリスクがありますか? 藤井先生: 親知らずに生じた炎症が、周囲や隣接の歯にも及んでしまうリスクがあります。例えば、親知らずにむし歯がある場合、その手前の永久歯もむし歯になるリスクが高いと言えます。その場合、むし歯が進行して隣接の歯の神経を抜かなければならないケースも少なくありません。そのほかに、親知らずの炎症が周囲に広がって、骨を溶かしてしまうこともあります。最悪の場合、唇周囲の痺れなど神経への影響も出てくる可能性があるため注意が必要です。このように「親知らずに症状が出た」ということは、周囲にも何かしらのリスクを抱えていることは知っておいた方がいいでしょう。 編集部: 親知らずは痛みや腫れがなくても、早めに抜いておいた方がいいのでしょうか? 藤井先生: 場合によりますが、若い人は親知らずが歯並びに影響する可能性があります。親知らずは最後に生える永久歯なので、生えてくる動きによってほかの永久歯の歯並びを悪くすることも少なくありません。とくに、将来的に矯正治療を検討している人は、痛みがなくても若いうちに抜いておいた方がいいケースもあります。 編集部: ちなみに、親知らずを抜かなくてもいい場合もあるのでしょうか? 藤井先生: 抜歯にもリスクが伴うため、親知らずの感染リスクが低いケースは抜かずに管理していくこともあります。具体的なケースに、「親知らずが完全に骨に埋まっている」「歯磨きやマウスウォッシュなどで親知らずのケアが自分できちんとできている」などが挙げられます。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 藤井先生: 親知らずを「抜いた方がいいのか」「抜かなくてもいいのか」という評価は、実際にレントゲンを撮ってみないとわかりません。したがって、痛みの有無にかかわらず、18歳頃を過ぎたら歯医者さんで一度レントゲンを撮って、自身の親知らずにどのようなリスクがあるかを知っておくことが大切です。また、近年は一般の開業医でも歯科用CTを導入しているところも増えており、より詳しい状況が把握できるようになっています。このような画像診断で正確な状況を知ることで、将来に起こり得るリスクに加えて、抜歯をする際のリスクも下げやすいでしょう。