大阪府北部の地震、「次の地震につながる可能性も」東北大・遠田晋次教授
18日午前7時58分ごろ、大阪府北部を震源とする強い地震が発生し、大阪市北区、大阪府高槻市、枚方市などで震度6弱を観測した。気象庁によると震源の深さは13キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.1。阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震(1995年、M7.3)や熊本地震(2016年、M7.3)と同じタイプの内陸型地震だ。大阪府内で震度6弱以上が観測されたのは、1923年の近代的観測を開始して以来初めてのことだという。 同庁などによると、震源の周辺には「有馬─高槻断層帯」と呼ばれる、神戸市北区から高槻市に至る長さ約55キロの東西に走る活断層があるという。同断層帯では、今から約420年前の1596年に慶長伏見地震(M7.5)が発生したと推定されている。また、兵庫県南部地震の震源となった活断層「六甲・淡路島断層帯」は、有馬─高槻断層帯の南西の延長線上に位置している。
活断層の地震に詳しい東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は、今回の地震について「気象庁の資料では、有馬ー高槻断層帯しか説明されていないが、私は上町断層帯に関係した地震の可能性もあると考えている」と指摘する。 上町断層帯は、大阪府豊中市から大阪市を経て岸和田市に至る、大阪平野を南北に縦断する長さ約42キロの活断層。政府の地震調査研究推進本部によると、同断層帯で起きると想定されている地震の最大規模はM7.5程度。最新の活動時期は約2万8000年前~9000年前と考えられている一方、平均活動間隔は8000年で、今後30年間に地震が発生する可能性は、国内の活断層の中では高いグループに属している。
気象庁の資料を見ると、今回の地震の発生場所は上町断層帯より10キロほど東で発生しているため、一見無関係に見える。 しかし、遠田教授は「上町断層帯は地下で東に傾いているので、地上に引かれた活断層の線と地下の断層面は地図上では必ずしも一致しない。一方の有馬─高槻断層帯は北に傾いていると考えられているが、今回の地震活動を見るとこの断層帯より南側で多くの地震が発生しているのが気にかかる。もしかしたら、有馬─高槻断層帯、上町断層帯という2つの活断層が接合するジャンクションのような部分で発生した地震かもしれない」という。 2つの断層帯のジャンクション部分で発生した地震というと、記憶に新しいのはわずか28時間の間に2度の震度7を観測した熊本地震だ。熊本地震では2016年4月14日夜に日奈久断層帯でM6.5の前震が発生し、同16日未明にその北に隣接する布田川断層帯でM7.3の本震が起きた。 遠田教授は「ジャンクション部分は常に力が加わった状態にあり、地震が始まる場所になりやすい。大阪府北部の地震の規模は熊本地震に比べると小さく、今のところは大きな余震も発生していないので少し安心している。しかしながら、熊本地震で前震の後にそれより大きな本震が発生したように、今回の地震をきっかけに上町断層帯、有馬─高槻断層帯など周辺の活断層が刺激されて活動し、次の地震につながる可能性も否定できない。今後、余震が起きる領域が変化してきたら要注意だと思う」と説明する。 さらに、遠田教授が懸念するのが、今回の地震が都市部で発生しているため、規模が小さくても被害が大きくなりやすいという点だ。「M6.1という規模の地震は大地震と呼ぶには規模が一回りから二回り小さいが、それでも今回のような被害が生じてしまう。当然ながら、規模の小さい地震は大きい地震より起きる頻度は高い。さらに、今回の地震によって、このぐらいの規模の地震が発生しやすい状態になっていると考えて、地震への備えを今一度見直して欲しい」と話している。 飯田和樹・ライター/ジャーナリスト(自然災害・防災)