<西サハラ>8月23日東京開催のTICAD9閣僚会合でモロッコ代表団の1人が暴力
モロッコは西サハラをモロッコ内の自治領とする解決案を唱えており、アメリカやフランスなど、一部の国はこれを支持している。日本には、このモロッコ案を支持する自由も、西サハラを無視する自由もあろう。しかし、国連を中心とする和平案に則った西サハラ問題解決を支持する姿勢が日本のアフリカ外交の建前だ。ならば、西サハラの帰属は住民投票を持って決めるとする解決案から目を背けることはできない。そして、この住民投票の主体はサハラーウィであり、サハラーウィの代表はポリサリオ戦線かつSADRである。西サハラの人々の存在を無視しながら、我々は中立的な立場で国際社会主導の解決を支持すると謳うことには大きな矛盾が生じる。 23日、高級実務者会合が始まろうとするころ、ある参加者は日本の対応について会場でこう語っていた。 「事前会合でAUが話し合って決めるよう、日本はSADRのTICAD参加の判断をAUに丸投げしている。どのような結果であろうとも、それはAUの判断だったと言うのだろう。日本の外交姿勢は、まるで高みの見物だ」。 結局、SADRの参加はAUから改めて認められ、騒ぎを起こしたモロッコの代表団は会場に留まったまま、TICAD9閣僚会合は幕を閉じた。
◆TICADにおける西サハラ参加問題の原因はどこに
「TICADのたびに西サハラ(の参加)が問題になる」とも言われるようになった。まるで西サハラの代表団がTICADで騒ぎを起こしているようにも聞こえるが、実像は逆だ。モロッコがSADRを排除しようと騒動を起こし、AUに認められたSADRの存在を日本が無視するがゆえ、本来なにも問題ないはずのSADR参加が問題となってしまっている。モロッコによるTICAD会場での暴力沙汰は今回が初めてではない。2017年にモザンビークで開催されたTICAD6閣僚会合では、モロッコ代表団が西サハラ代表団の入場を阻止する騒ぎを起こしている。 日本とモロッコのビジネスの結びつきは、モロッコが常にアフリカ地域における日本企業の進出先トップ5に数えられるほど強い。また、モロッコ産と装われた西サハラ産の天然資源を日本は輸入し続けている。モロッコは西サハラの占領地で、その政策に異を唱える者を即座に政治犯として捕らえており、監禁や拷問も厭わない国だ。モロッコとの関係を維持したいあまりに、西サハラ問題とサハラーウィの存在には目を瞑っておこうとの思惑が、官民双方に働いていないだろうか。TICADにおける西サハラ参加問題は、すべてのAU加盟国と公平に向き合うことなく、モロッコに傾注しながらも中立を装う日本の矛盾した外交姿勢にその原因の一端がある。 TICAD9の本会議は、2025年8月20日から日本で開催される予定だ。