ボクシング世界王者 内山高志の強さの秘密
土居さんは、試合のない時から体重を測定して管理することを義務づけている。減量前と減量後の体重の増減は、通常体重の5%から8%の間に抑えられるように指導してきた。ウエイトトレを導入することで心配だった減量も逆に筋量が増えたことで代謝がアップしたため、脂肪が燃焼しやすい体質に改善され、節制も手伝ってスムーズになった。そして、結果が出れば、さらなるモチベーションにつながるのが、トレーニングの醍醐味である。 「齢は関係ありません。下半身をもっとやりたい。踏ん張りや安定感が違ってくると、ストレート系のパンチが伸びます」とさらなる進化を約束した。 内山は、WBC世界ライト級王者、エイドリアン・ブローナーのスピードとフィジカル、その懐の深さを理想像に掲げているという。 私は、最後に土居氏に、こんなことを聞いた。 ――内山は、何歳くらいまでできますか? 「勝つために、この辛いトレーニングを続けるんだというモチベーションさえあれば、肉体的には、38歳までは十分にできると思います。本人の意志次第でしょう」 進化を続けるチャンピオン、内山高志。 ターゲットにしていた元五輪金メダリストのユリオルキス・ガンボア(キューバ)が、ライト級に上げてWBA世界スーパーフェザーの暫定タイトルを返上したため、熱望していた統一戦は棚上げとなった。V7を果たした後、内山は、「Who’s next」と書かれたナイキのTシャツを着た。他団体の王者を見ても、ガンボア、ブローナーが去ったこの階級にスーパーチャンピオンは不在だ。 ラスベガスのリングで、セミ、セミセミの扱いを受けているのは、WBO世界同級王者のローマン・マルチネスくらいだが、そのマルチネスでさえ、長谷川穂積に敗れたファン・カルロス・ブルゴスと“負けたようなドロー防衛”をするなど、今の内山からすれば怖い相手ではない。彼が一夜明け会見で語った「4団体統一」の夢も決して夢ではない。個人的には、WBC同級王者の三浦隆司(帝拳)との統一戦よりも、ラスベガスのリングに乗り込んで欲しい。その願いは、内山の鋼の肉体をサポートする土居さんも同じである。 (文責・本郷陽一/論スポ) ――――― サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。