見逃される「うつの子ども」たち。3~17歳の子どもの3.2%が発症という調査結果も
子どものうつの症状とは?
大人はうつ病やうつ状態になると欲がなくなったり、無気力になりますよね。子どもにあらわれるのも同じような症状なのでしょうか。 「子どもの場合、元気がなくなったり感情的になったり、食事をとらないなどのサインがあります。基本的に大人のうつ病・うつ状態と似ていますが、子どもは『わがままだ』『甘えている』『しつけがたりない』などと誤解されたまま、うつの症状が見逃されてしまうこともあるのです。ほかにも、“不登校”もうつ病の症状の可能性があります。その場合は無理に学校に行かせるよりも、自宅療養を優先させた方がいいでしょう」 子どもが発する「いやだ」「苦しい」という否定的な発言を、どこまで許容すべきかはとても悩ましい問題ですね。 「そうですね。子どもたちはまだ十分に社会化されていないので、個性的かつ多様です。別々の子どもがたとえ同じような訴えをしていても、それぞれの脳の不調は違います。次に起こる反応は千差万別です。兄弟姉妹でも違う言動をとることを考えると、子どもたちの精神症状が本当に多様であることがわかります」
思春期が近づくと、子どものうつ病の発症率は跳ね上がる
子どもの年齢によって、よりうつ病が発症しやすいということはあるのでしょうか。 「思春期ですね。思春期が近づくにつれ、人間関係も複雑になり、社会から求められることも増えるので、子どものうつ病の発症率は大きく増えます。 それに子ども時代とは、同世代との競争心に心が支配される時代でもあります。それは脳の特性上仕方がないことなのですが、実際に起きている問題以上に他人の目を気にするという脳の特性が、子どもたちを苦しめているということも重要です。最初は思い込みや気持ちの問題だったのに、次第にリアルな問題として子どもが自分自身の行動や選択を制限するものになっていきます」
子どものうつに、大人ができるアプローチは?
子どもたちも年齢が上がるにつれ、脳が疲れそうな出来事が増えますよね。ただ子どもに何かしらのうつらしき兆候が表れたとき、家族はどう接すればいいのでしょうか。 「『あるがままの姿でも愛される』という実感を繰り返すことが大事です。子どもが何度も繰り返し味わうことができたなら、競争心の支配から解放されることでしょう。家族が、『子どもの将来が不安だから』と、学歴やお金にこだわりすぎると、あるがまま愛された実感は損なわれてしまいます。感情面でサポートをしながら、『世界はこういうものだよ』という知的な理解も増やして、子ども自身が『仕方がない』と思えるようになる。そして次の行動に移れるようになる。 心の問題は『完治しました!』という明確なゴールはありません。仕方がないと思えることが増えていって、でも『生きててよかったな』と思えることもゆっくり増えていく。これが治療のゴールです」 これはけっして子どもだけの問題ではなく、大人の私たちが「子ども時代にじつはうつ病だった」「こんな経験をして、心に傷を負っていた」と気がつくことも大切なのだとか。 傷つきの原因は、どんなに小さいことでも、大きなことでも関係ありません。なにをどう感じるか、心のアンテナの感度ととらえ方は全員違います。 もしかしたら、今を生きるわたしたちが感じている“心のモヤモヤ”の原因は、子ども時代にあるかもしれません。振り返って、気がついて、自分の過去をゆっくり再確認することが大きな一歩になるのです。
ESSEonline編集部