税金が100万円以上も戻ってくる iDeCoで“じぶん年金”づくり
iDeCoで運用すると、値上がり益や利息、分配金にも一切税金が掛からない
iDeCoの場合、もう一つ税金でおトクなことがあります。それは、iDeCoで運用した結果得られた利益、具体的には値上がり益や利息、分配金などには一切税金がかからないということです。利益には通常20%の税金がかかりますが、これは金額がいくら増えても一切かからないのです。具体的にどれぐらい金額が違うかということをみてみましょう。仮に毎月2万3000円を30年間積み立て、平均年3%で運用できた場合、税引き後の元利合計は1209万円です。ところが全く税金がかからない場合、その金額は1339万円となりますので、130万円もおトクになります。 また、もし投資信託で運用するのであれば、その運用手数料が安いのも魅力です。普通に銀行や証券会社の窓口で買える投資信託と比べると、ものによってはその手数料が2分の1とか3分の1近いものもあります。先ほどと同じように長期にわたって積み立てた場合、支払う手数料の総額は何十万円も違ってくるのです。
60歳まで絶対に引き出せないのは、デメリットなの?
このようにiDeCoの最大のメリットは税金が安くなるというお金の面でのおトク感だと言われますが、私はそれ以上に大きなメリットがあると思っています。それは「iDeCoが60歳まではお金を引き出すことができない」ということです。 「え!何を言ってるの!途中でお金を引き出せないのはデメリットじゃない!」 おそらくそう考える人は多いと思います。でも私はあえて、60歳までお金を引き出せないのがメリットだと主張します。それは一体なぜか? 普通の預金や投資であれば換金性がないというのは明らかにデメリットです。1年定期預金よりも5年定期の方が金利が高いというのはそういう不便さの代償だと言ってもいいでしょう。ところがiDeCoは、何のためのお金かというと、目的がはっきりしています。老後の生活をまかなうためのお金なのです。だとすればいつでも引き出せる仕組みになっていればつい使ってしまうということになりがちです。これは退職金や公的年金を考えてみればわかります。退職金も退職しない限りもらうことはできないというのが原則です。公的年金も通常は65歳までは使えません(金額を減らせば60歳からは受け取れます)いずれも遠い老後に備えるために簡単に使ってしまうことがないように制限がかけられているのです。 普通の金融商品は「○年間は解約できない」といっても本当に解約できないのではなく、解約したらペナルティがかかるとか優遇がなくなるという意味です。ところがこのiDeCoは、加入者本人が死亡した場合に遺族に払われるといったケースを除けば、いかなる理由があっても引き出すこと自体ができないのです。iDeCoのように自分の努力で老後資金を準備する制度であってもこのように制限がかけられているのは良いことだと思います。 ただ、注意すべきなのは、絶対に引き出せないからこそ、慎重にそして無理のない範囲内で積み立てを始めるべきだということです。途中で金額を増やすことはできます。最近のiDeCoブームで金融機関も一生懸命PRするようになりつつありますが、いくら勧められても、自分の出せるお金の範囲内で利用すべきであるということは知っておいてください。 (経済コラムニスト・大江英樹) 日本証券アナリスト協会検定会員、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行動経済学会会員。著書に『定年楽園』『その損の9割は避けれる』(三笠書房)『老後貧乏は避けられる』(文化出版局)、最新刊に『はじめての確定拠出年金投資』(東洋経済新報社)など著書多数。