大谷翔平のキャンプイン会見に見えた日米文化の違いとは?
ここには早速、日米の文化の違いが滲む。 日本の会話は、察する、暗黙の了解、あるいは、あえて言葉にしない……という中でも、成立する。アメリカにもそういう要素がないわけではないが、子供の頃から、「なぜ?」と聞かれ、「BECAUSE」を用いて、自分の意見を求められる。 アメリカ人選手が、インタビューで雄弁に映るのは、そうした背景もあるが、とはいえ、歯の浮くような言葉を並べたり、同じことを繰り返したりもしている。今回のような会見では、特にそうだ。ただ、ひょっとしたらそれを米メディアは求めていたのかもしれない。ああいう場では、それで良かったのかもしれない。 だが案外、あの答えに、大谷の一番強い思いが滲んでいたのではないか。短い時間で語れるようなことではない。うわべだけの言葉を並べたくない ── 。 実のところ、そう推測しつつ反論を試みると、「ならば、そう言えばいい」と一蹴された。それも、分からないではない。 結局、そこもまた、大谷が学んでいかなければならないところなのかもしれない。 ちなみにそういう部分は、カブスのダルビッシュ有が絶妙にうまい。押して、引いて、首をかしげる記者とは、英語で1対1で話す。手本が身近にいる。 脱線してしまったが、会見に話を戻すと、注目したいコメントがあった。 体が絞れているのでは? と聞かれて、大谷は、こう答えている。 「特に変えたところはなくて、この年、この年、というよりかは、5年後、10年後をしっかり見てトレーニングをしていこうと思っているので、その中の過程で、いろいろ変化していければいいかなと思いますし、長期的なスパンの中で、よくなっていければいいなと思います」 その視野の広さについては、まさにダルビッシュの影響を感じた。 同じ日、ダルビッシュは、4~5キロの減量に成功してカブスのキャンプ初日に臨んだが、2015年3月にトミー・ジョン手術を受けてから体を大きくしているときに、ついてしまった脂肪を今回のオフで取ろうと、最初から予定していたそうだ。 どうしたら、夢が現実になったという実感が湧くのか問われたときには、「そう思った瞬間は今まで一度もない」と言ってから、こう大谷は続けた。 「まずそこを目指して頑張っていく途中。それがいつ来るのかっていうのは、現役を辞めたときなのか、途中なのかっていうのは、現時点ではわからない」 ここでも、軽々しく、「大リーグに来たことで、一つ夢がかなった」とは言わない。 正直に言えば、それぞれの言葉にもう少し補足がほしいが、あの形式の会見では質問が被せられない。その点ではもどかしさが残ったものの、キャンプはまだ、始まったばかりである。 もちろん米メディアも、長いキャンプを通して、例の答えを求めようとしていくはずである。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)