大谷翔平のキャンプイン会見に見えた日米文化の違いとは?
エンゼルスのキャンプ施設の北側には、テンピ・バッツという差別侵食によって形成された火山性の丘がある。アリゾナでは多く見られ、州北部のセドナまで車を走らせると、街そのものがそうした地形によって形成されている。 標高426メートルのテンピ・バッツの頂上にはホテルがあり、周りに高い建物がないことから、360度のパノラマビューは圧巻である。 14日、そのホテルで大谷翔平が取材に応じた。 用意された会場は、150人以上が収容できるボールルーム。入団会見ならまだしも、キャンプ初日の対応で、ここまで大掛かりなのは、記憶にない。日本のメディアはもちろん、米メディアも地元記者らを中心に席を埋め、ESPN(スポーツ有線放送局)などは、生中継をしたよう。 そんな中で、ひな壇に上がった大谷は、高揚感や、戸惑いの表情を浮かべることなく、一つ一つの質問に丁寧に答える。むしろ、横に座っていた通訳が緊張していたようで、日本語で聞かれた質問を聞き直そうとすると、横から大谷が小声で、フォローした。 フィールドに加え、こうした場でも注目されることにプレッシャーはないのか? そんな質問には、こうさらりと答えている。 「日本でもそんなにプレッシャーのかかる方ではなかったので」 ただ、そういう場だからか、断定口調を避け、安全運転に終始。素がのぞくような場面は少なかった。 だが、意外にも米メディアは、混乱していた。およそ30分の会見後、近くで、米メディアが4人ほど集まって話していた。 その中の一人 ── 知り合いの記者と目が合うと、呼ばれる。するといきなり、こう聞かれた。 「ショーヘイは、なぜ、エンゼルスを選んだんだ?」 その質問は、会見の途中でも飛んだ。そのとき大谷は、「(その質問は)来ると思ったんですけど、もう、何回も説明しているので、どうしようかなと思ってたんですけど……」と若干の戸惑いを口にしながら、続けた。 「フィーリングが合ったっていうのが一番で、あとはキャンプをみてもらえればわかるんじゃないかな、と思いますし、自分がエンゼルスにどうやって対応していくかが一番大事なので、なぜ決めたかというよりかは、自分がどう馴染んでいくかが大事かなと思います」 確かにこれでは、誰もすっきりしない。12月9日に行われたアナハイムでの青空会見でも同じように答え、大谷は明確な理由を口にしなかった。ましてや今回は、途中で論点が変わっている。 ただ、問題はそこではなかった。別の記者が、まくし立てた。 「話したくないって、どういうことなんだ?」 確認すると、あのとき、通訳はこう訳したのだという。 I don’t want to talk about why I joined the Angels.(中略)You guys will find out why I chose the Angels and why it was the right choice. (なぜ、エンゼルスに入団したかということについては、話したくありません。(中略) なぜエンゼルスを選んだのか、なぜそれが正しい選択だったのか、ということはいずれわかると思います) なるほど。これでは、誤解や様々な憶測を招く。日本語でもぼかしたことは間違いないが、「話したくない」とは言っていない。前半部分はいらなかった。こんなところにも通訳の緊張がうかがえるが、そう説明したところで、理由を明確にしていないのは同じ。さらに別の記者からこう指摘された。 「あれだけ、大人の対応が出来る。言葉もよどみない。そんな彼が、なぜ理由だけ、曖昧にするのか? 『エンゼルスが、素晴らしい組織だと思った。彼らのプランが、僕の可能性を最大限に引き出してくれるのではないかと思った』 ── そう言えばいいだけのこと。なぜ、明確なBECAUSE(なぜなら)がない?」