【今さら聞けない時事問題が100%わかる!】「103万円の壁」ちゃんと説明できる?
● せっかく働いたのに損するなんて、めちゃくちゃ腹立ちますね アカツキ:吉田のお母さんには頭が下がるな。そんな親たちの負担を少しでも軽減するために作られているのが「特定扶養控除」という減税の制度だ。大学生の年代にあたる19~22歳の子どもがいると、親の収入のうち63万円には税金がかからなくなる。たとえば親が年収500万円の会社員なら所得税率が20%なので、年間12万6000円減税される計算だ。 吉田:12万6000円! 子どもがいると何かと物いりですから、それは助かりますね。 アカツキ:ところが、子どものアルバイト収入が103万円を超えたとたん、この「特定扶養控除」の対象から外れて、減税が受けられなくなってしまう。子どもが103万円を超えて、たとえば110万円稼いだら、どうなると思う? 吉田:えーっと、子どもの収入は7万円増えて、さっき計算したとおり税金が3500円かかっても6万6500円のトクですよね。でも親の手取り収入が12万6000円減るから、家計全体で見ると……うわっ、5万9500円の損じゃないですか! せっかく働いたのに損するなんて、めちゃくちゃ腹立ちますね。 アカツキ:そうなんだ。2024年の衆院選では、国民民主党がこの問題を中心的なテーマに掲げた。ネット上の動画やSNSなどで「若者の手取りを増やす」と訴え、課税最低ラインや控除の基準を178万円に引き上げると公約して議席を4倍に増やした。 吉田:もっとお金を、という若者の気持ちもその親の気持ちはよくわかります。でもやっぱり、子どもがいない僕や先輩には関係ない話ですね。 ● うーん、愛する島根県が破綻するのは困るけど、若者や親の気持ちもわかるし…… アカツキ:ところが、当事者以外にも大きな影響があるんだ。一つは人手不足の問題だ。飲食やサービス業では人手不足が深刻だが、「103万円の壁」がなくなれば数十万人が働き控えをやめるという試算もある。 吉田:たしかに、うちの近所にもアルバイトが足りなくて店を閉めているお店があります。せっかく働きたい人がいるのに、働いてもらえないのはもったいないですよね。 アカツキ:一方で、課税最低ラインを引き上げると税金を払う人が減り、国や地方の税収が減るという問題もある。政府は、国と地方で計7兆~8兆円税収が減り、うち4兆円程度は地方の減収と試算した。全国知事会長を務める宮城県の村井嘉浩知事が「たちどころに財政破綻するだろう」と訴えるなど、地方からは悲鳴が上がっている。自民党と公明党は2024年12月、地方の訴えと選挙で大勝した国民民主党の両方に配慮して、最低課税ラインを123万円に、「特定扶養控除」の基準を150万円に、それぞれ引き上げる方針を決めたんだ。 吉田:うーん、愛する島根県が破綻するのは困るけど、若者や親の気持ちもわかるし……。そうだ、103万円とか12万6000円とかがどうでもよくなるように、日本全体の給料をじゃんじゃん上げて1人1億円ぐらいにしちゃいましょう! 僕、それを公約にして次の選挙に出ます! アカツキ:新聞記者の次は国会議員か。世界征服はもういいのか? ※吉田くんとアカツキ先輩が活躍中のアニメ連載「そもそも?知りたい吉田くん」は朝日新聞デジタルで読むことができます。
「鷹の爪」吉田くん