「お金を求めているわけじゃない」14年前の男子高校生殺害事件で遺族が加害者に「殺害の責任」を問い、その両親の「監督責任」を問う民事裁判 第一回口頭弁論で遺族が「どこまで責任から目を背けるのか」と訴え
22日午前10時、神戸地方裁判所の法廷で、神戸市北区で2010年に殺害された男子高校生の遺族が、加害者の男と両親にその責任を問う民事裁判の第一回口頭弁論が開かれました。 ■【動画で見る】「お金を求めているわけじゃない。謝罪を」14年前の男子高校生殺害事件で遺族が加害者に「殺害の責任」を 事件で息子を奪われた父親が「どこまで責任から目を背けようとするのでしょうか。納得のいく答えを得るためにこの訴訟を起こしました」と法廷で訴えました。
■男に対し将太さん殺害の責任 その両親に監督責任を問う民事裁判
2010年、神戸市北区の路上で高校2年だった堤将太さん(当時16歳)がナイフで刺されて殺害されました。 事件からおよそ11年後に逮捕された当時17歳だった男(31)は裁判で懲役18年の判決が言い渡されて控訴。 この刑事裁判では、遺族にとって納得のいく動機の説明や謝罪が語られることはありませんでした。 さらに男は、命じられたおよそ9300万円の損害賠償についても不服を申し立てていました。 こうしたことから遺族は、改めて男に対して、将太さん殺害の責任を問うとともに、「男は子供の頃から不満があると暴力に訴える傾向があったのに、両親が監督を怠り事件が起きた。また事件直後に転居させ、犯行の発覚を遅らせた」などとして、およそ1億5000万円の損害賠償を求めて民事裁判を起こしていました。
■将太さんの父「お金を求めているわけじゃない」
堤将太さんの父・敏さんが今回の民事裁判を起こすにあたって語ったことがあります。それは、「お金を求めているわけじゃない」ということです。 殺人事件などで加害者側に損害賠償が命じられても、そのほとんどは支払われていません。 そして愛する家族の命を金額で表すこと自体に遺族は苦しみます。 それでも訴えを起こしたのは、次のような理由からです。 【堤将太さんの父・敏さん】「損害賠償請求であげた金額が大きなものかどうか、分からないけれども、あなたたちはそれだけのことをやったんだと。その責任をちゃんと果たしなさい、と言いたいということです」
■「大切な大切な息子だったんです」「加害者からも両親からも一度も謝罪がない」
22日に開かれた第一回口頭弁論。 加害者側が両親も法廷に姿を見せない中、父・敏さんが法廷で意見を述べました。 自身の苦しい経験とともに、犯罪被害者、遺族が置かれている状況を知ってもらいたいと裁判官たちに向かって訴えかけました。 【堤将太さんの父・敏さん】「将太が殺された事件からまもなく14年になります。当時16歳、高校2年生でした。友達もたくさんおり、よく笑い、明るい息子でした。将来のことを考え始め、どういう人になりたいか考え始めたころでした」 「大切な大切な息子だったんです。希望に胸を膨らませていましたが、すべてを打ち砕かれ、奪われ、殺されてしまったのです」 「事件後は、将太は何カ所も刺され、どれだけ痛かったか、苦しかったか、『助けてやれなくてごめん』と将太のことを考えて、気づけば朝になり、気づけば夜になっていました」 「記憶が不意によみがえってくるたびに、あの時、あの場所に気持ちは引き戻され、息が詰まり、内臓が締め付けられ、足元から何もかもが崩れ落ちるような感覚に襲われます。 あの時、あの瞬間に、私たちの心も殺されたのです」 「加害者からも両親からも一度も謝罪はなく、損害賠償の一部を支払うという申し出もありません。どこまで責任から目を背けようとするのでしょうか。納得のいく答えを得るためにこの訴訟を起こしました」 敏さんが意見を述べている間、裁判官はじっと敏さんの方を向いて話に聞き入っているように見えました。
■父・敏さん 加害者側に「真摯に向き合って」
原告側によると、裁判で加害者の男は、求められている損害賠償の金額について「高すぎる」と争う主張をしているということです。 また加害者の両親は、転居で発覚を遅らせたという堤さん側の訴えについて、「転居は事件以前から決めていた」、監督責任について、「ナイフを使って第三者に危害を加えることは予見できなかった」などと主張しているということです。 裁判の後に開かれた記者会見で父・敏さんは次のように述べました。 【堤将太さんの父・敏さん】「もうちょっと真摯に向き合ってほしいという気持ちしかないですね」
関西テレビ
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