TURNSTILE単独公演ルポ 「最高にハッピーな暴動」が生まれた理由
バンドの総合力を支える「演奏能力の高さ」
そういった多彩なリズムチェンジと硬軟自在なノリ変化を可能にする演奏能力の素晴らしさもこの日のライブでは際立っていて、特に後半ブロックへ移行する前にダニエル(・ファング:Dr)が繰り出したドラムソロは、TURNSTILEの音楽トランスフォームの歴史を証明するようなエグさだった。一打がとにかくデカく、しかし全ビートが粒立って聴こえるからこそ抑揚豊かでカラフルなドラムソロ。音楽的要素が多彩でトランジションも急激なのに体が自然と反応できる楽曲になっているのは、そのセクションとセクションの間にあるガイドが細やかだからだ。カウベルを多用するプレイもその意識の表れのひとつだろうし、クリーンで朴訥としたコーラスを増加させてきたブレンダン(・イェーツ:Vo)のボーカルスタイルも、観客を曲の中にスッと導く扉になっている。 前述したように実はオーセンティックで王道なリフの数々も、音楽要素が多彩になればなるほどTURNSTILEの心臓部分として輝く。爆走するアンサンブルの中にあって、一音一音がズバリとキマるリフのキレが痛快でたまらなかった。終盤までブレない歌の安定感と、演奏の体幹の強さ。そういったそもそもの部分が強く太く聴こえてくるライヴでもあった。 ラストに鳴らされた「T.L.C.」ではブレンダンの「We need you」のひと声に合わせて100人以上がステージに駆け上がったが、Tシャツ姿のキッズに限らず、年代もファッションもバラバラな一人ひとりがバラバラなまま人民祭を繰り広げているように見えた。踊り、歌い、拳を掲げて、ひとつのイデオロギーではなくひとつの音楽に集う。それこそが音楽にとって最高の理想郷であることは言うまでもないだろう。 「Real Thing」や「Big Smile」が連打された場面ではそれこそ暴動のようなモッシュピットが描き出され、「DON’T PLAY」や「WILD WRLD」では名前のないダンスが吹き荒れ、しかしそのどれもが笑顔の交錯によってライブハウスいっぱいのFunとして伝搬していく様がひたすら美しかった。自由とは誰かの定義によるものではなく、お前が決めてお前が選ぶものなのだと。そんなことを自分で自分に刻みつけたくなるような、爆速の理想郷だった。
Daichi Yajima