「第3子以降に1000万円」で子どもは増えるか…政策通たちが動きはじめた「超・少子化対策」驚愕の中身
港区で社会実験をやってみたい!
ただし、結論を急ぐのは良くない。ここまで見てきたのはあくまで仮説なので、実際に効果があるかどうかは実証実験が必要だ。 そこで、この政策に関心をもったのが、港区の斎木区議だった。 「実は、港区は財政の収支が優秀で、毎年約100億円の黒字が積みあがっています。これで積みあがった基金は2000億円ほどあり、財政調整基金も約800億円もある。 たとえば、2021年の出生数は2461人で、そのうち第3子以降は214人でした。この子たちに1000万円を支給するとなれば、その予算は約21億4000万円です。決して無理な話ではありません」 港区では2023年の年末に、所得制限なく子ども1人あたりに5万円分の「子育て応援商品券」を配っているが、その予算は約25億円だった。第3子以降に1000万円の支給は、それよりも安い値段でできてしまうということだ。 斎木区議は言う。 「日本のなかでも財政的に余裕のある港区でまずは実証実験を行い、効果が見込まれれば全国の自治体に広がる可能性がある。そうなれば、国に全国で実施するよう働きかける有効な提案になるでしょう」
国政でも可能
子育て政策に詳しい国民民主党の玉木雄一郎代表はこう語る。 「第3子に1000万円を18歳まで分割支給するのであれば、月々約4万6000円です。たとえば、いまの異次元の少子化対策では、国でも第3子以降に月々3万円を支給する案が議論されています。 つまり、第3子以降に1000万円を支給しようとするならば、国の3万円に加えて、各自治体は1万6000円を上乗せすればそれでいい。都道府県や自治体でその負担を分け合うことができれば、全国で実施することを想定しても、財政的に難しい話ではありません」 とはいえ、これまでの経済的な子育て支援が必ずしも、出生率の増加に効果があったというデータは、いまのところ得られていないという。 しかし、玉木氏はその原因をこう語るのだ。 「確かに経済的な子育て支援が出生率の上昇に寄与したといえるデータは見当たりません。その通りなのですが、政策立案の現場に身をおいている立場から言えば、これまでの対策にインパクトがなかったことも事実。 日本の少子化や人口減少はかなり危機的な状況にあるのですから、インパクトのある政策をいまやるか、やらないかの分水嶺といえます。 経済的にインパクトがあれば、必ず行動は変わってくる。欲しかったけどあきらめていたもう一人の子どもを持てるかもしれないと思っていただける政策をやるべきだろうと思います」 少子化対策については、依然として「家族観」や「子どもの人権」の観点から、経済的支援への批判や反発は多い。 「第3子以降に1000万円」――。あなたはこの政策をいかに考えるだろうか。 後編「「第3子以降に1000万円」は実現可能…! 岸田より自治体が考える「超・少子化対策」のほうが「異次元」に思えるワケ」では、その現実味について、さらに深掘りします。
藤岡 雅(週刊現代 記者)