グローバルで不統一なステーブルコイン規制、対応に現れるテザーとサークルの違い
スピードの必要性
アルドイノ氏によれば、犯罪にスピーディかつ実践的に対処しようとすることは、暗号資産業界にとってフラストレーションの源だという。 同社は法執行機関と直接協力することによって、競合他社と比較して先回りしたアプローチをとっており、最長6カ月かかり、その間に資金が分散してしまう可能性がある長い司法手続きの必要性を回避していると同氏は述べた。法執行機関からの連絡を受けてから資金を凍結するためには、迅速に行動したほうがいいとのことだ。 「司法省が資産を凍結する必要があるときは、我々に連絡がある」 さらに同氏は、米国の法執行機関と協力して6億ドル(約924億円、1ドル154円換算)相当以上のテザー(USDT)の凍結に成功していると述べた。 「我々は、外科医のような正確さで資産を凍結する能力を持っている。しかし、財務省が制裁対象者を外国資産管理局(OFAC)のSDNリストに追加すると、対象者はすぐに消え去ってしまう。理想は、『これらの個人を調査しており、制裁を科す予定だ。公表する前に、彼らの資産を凍結できないか』と事前に我々に問い合わせてくれることだ。そうすれば、効果的に資金を封鎖できる」 2社とも苦労を重ねてきた。時価総額が1070億ドルにのぼる最大のステーブルコインであるUSDTの健全性については、何年にもわたって多くのことが指摘されてきた。 CircleのUSDコイン(USDC)は時価総額がUSDTの3分の1で、米国の銀行システムと結びつきがあるCircleの耐久力は、2023年のシリコンバレー銀行の破綻の際、一時はかなり危うく見えた。
Terra(テラ)の狂気
伝統的な金融価値観を持つ人たちに対するCircleの魅力と、Tetherの実践的で反応的な暗号資産へのアプローチの差異は、Terra(テラ)のステーブルコインUSTとその裏付け通貨であるLuna(ルナ)の崩壊についての彼らの態度にも反映された。 Terraが崩壊する少し前、Tetherのアルドイノ氏はこのプロジェクトは「悪いアイデア」と示唆した。だが、同氏の批判は軽蔑の目で見られた。当時、「アルゴリズム型ステーブルコインに否定的なのは当然だ」と多くの人に言われたことをアルドイノ氏は覚えている。Tetherのシェアを奪おうとする競争相手だったからだ。 「Terra/Lunaは崩壊し、Tetherは大きな圧力にさらされ、空売りと取り付け騒ぎで破綻するのではないかと多くの人が言っていた。しかし、我々は48時間で70億ドル、20日間で200億ドル以上を換金できた」 一方、Circleのディスパルテ氏は、暗号資産の回避可能な「オウンゴール」と、比較的若い業界がこのような「波瀾万丈の実績」を経ていることを嘆いている。 「アメリカでは州ごとの定められている電子マネーのルールや送金のルールを遵守していれば、例えば、Terra/Lunaのケースでも、元本を守ることはできただろう。額面割れは防げたはずだ」とディスパルテ氏は語った。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:Shutterstock|原文:Tether, Circle Diverge on How to Tackle Global Patchwork of Stablecoin Rules
CoinDesk Japan 編集部