ロス五輪へ飛躍を 陸上男子走り高跳びで15年ぶり高校新 福岡第一・中谷魁聖 U20世界選手権に出場
1日に福岡市で行われた全国高校総体の陸上男子走り高跳びで2メートル24の高校記録を樹立した中谷魁聖(福岡第一3年)が、8月下旬にペルーで行われるU20(20歳未満)世界選手権に出場する。15年ぶりに高校記録を更新した自信を胸に臨む自身初の世界大会。来年の東京・世界選手権、さらに4年後のロサンゼルス五輪へと飛躍するための足掛かりにするつもりだ。 ■ピンクのユニホームで快走するドルーリー朱瑛里【写真】 他の種目が終了した夕暮れ。全ての観客、関係者の視線が集まった博多の森陸上競技場で、既に優勝を決めていた中谷は2メートル24を2回目で成功させた。日本記録保持者で2021年東京五輪代表の戸辺直人(千葉・専大松戸、現JAL)が09年に出した従来の記録を1センチ更新。「集中しやすく、一番いい状態、雰囲気で跳べた」と特別な空気感に浸った。 身長180センチ。走り高跳びの選手としては高くない。〝ハンディ〟を補って余りある長所が、踏み切る直前に生み出す爆発的なエネルギーだ。高校に入ってから下半身を鍛えたこともあり、助走で体を内に傾けて弧を描く「内傾」に入った時「重心を低くし、速いスピードで入ることができる」と自負する。 福岡第一で数々の強豪を育てた田之上興造監督も「特に踏み切る2歩前からの重心の低さはシニアを含めてもトップクラス。腸腰筋を鍛え、リードレッグ(踏み切り後、先に上げる脚)で(力を)ためる動きができれば、2メートル30は跳べる」と素質の高さにほれ込む。
中学時代は意外にも
中谷は中京中(福岡県行橋市)では1メートル83が最高で全国大会には出られなかった。転機は卒業間際の冬。戸辺の跳躍を映像で研究した。「それまで単に弧を描いて踏み切るだけだったが、戸辺さんは最後の5歩で明らかに動きが変わっていた」とまねすると、高校入学直後の記録会で1メートル94をマークした。 その後も田之上監督らから技術論を学び、練習を動画に収めて確認しながらフォームを洗練させてきた。田之上監督は「非常に勉強熱心で、理解して体現する力がすごい」と称賛する。 自身初の国際大会だった4月のU20アジア選手権(ドバイ)で2メートル19の自己新をマーク。舞台が大きくなるほど「楽しめる」と力を発揮する。U20世界選手権でも「自己新や順位を狙いたいけど、楽しまないとテンションが上がらない」と初の世界大会を待ち望む。 全国総体では男子800メートルの落合晃(滋賀学園)が1分44秒80の日本記録を樹立するなど好記録が続出した。「今はいろんな選手が強く、高校生でもシニアと戦っていける世代。負けていられない。来年の世界選手権や(28年の)ロサンゼルス五輪を狙う」。今秋にはシニアの大会にも参戦予定。同世代に刺激を受けながら、国内トップレベルの選手たちにも勝負を挑んでいく。(末継智章)
兄も全国総体出場
◆中谷 魁聖(なかたに・かいせい)2006年10月8日生まれ。福岡県行橋市出身。5歳の時、6歳上の次兄・瑠衣斗(るいと)に影響を受け、新田原ランナーズ(同市)で陸上を始める。小学4年時から走り幅跳び、中京中入学後に走り高跳びに本格的に取り組む。兄2人との3人兄弟で、瑠衣斗も佐賀・鳥栖工高で全国高校総体5000メートル競歩に出場した。180センチ、65キロ。
西日本新聞社