ヤマハ「YZF-R1」などの型式指定申請時の「不適切」とは何だったのか? 国交省は何を検査しているのか
型式指定申請時の不適切行為ですべての生産車両が疑われ、生産ラインが止まる
ヤマハ発動機の型式指定申請時の不適切事案は、日野自動車、ダイハツ工業などで連続した性能試験の改ざんをきっかけに、国土交通省が他社に対して類似の事案がないか確認を求めたことに回答する形で公表されました。 【画像】これがヤマハの「不適切事案対象型式」です(6枚)
ヤマハ発動機は現行モデルの「YZF-R1」、生産を終了した「YZF-R3」、「TMAX」について、不適切な型式指定申請があったことを報告しました。それぞれに現行モデルがありますが、「YZF-R3」、「TMAX」の不適切事案は、生産を終了した型式に限定されます。 型式指定とは、大量生産を前提として生産されるどの車両も、均一な安全・環境性能であるということを車両試験や工場設備の各種データで提示し、その証明として「型式」を取得する制度です。 申請時のデータに不適切な事案があるということは、不適切な証明を前提に大量生産されていることが推測されるため、同じ型式で生産されている車両は、その疑問が払拭されるまで工場から出荷できない状態が続きます。 それだけ自動車メーカーにとって影響が大きい制度です。 こうした事案が発生した場合、自動車メーカーは第1に、すでに市場に出回った車両についてリコールなど回収の必要性があるかを確認します。 ヤマハもこの点では「現在出荷を停止している対象の車両および過去に出荷済みの車両に関しては、再試験の上、実際の使用に支障は生じないことを確認済みです」ということを、合わせて公表しました。 「車両に支障が無いなら、すぐにでも生産ラインを再開できるじゃないか」「国交省は厳しすぎる」という意見も一部にありますが、ユーザーからすれば慎重に見定めてもらう必要があります。 仮に支障があることが後々に判明すると、補償問題にも発展します。過去の燃費不正では燃費を良く見せた分のユーザーへの補償、車検時における該当部品の無償交換などをしたケースがあります。
なぜパイプジョイントの交換より、出力ダウンで試験する選択をしたのか
では、ヤマハ発動機のケースのように、ユーザーの使用に支障が無い場合はどうなるのか。それが次の段階です。 何が問題だったのか。現行モデルの「YZF-R1」を例にとると、同社の説明はこうです。 「騒音試験において、規定とは異なる条件で試験が行なわれていたという不適切な事案が確認されました」