2023年の「休廃業・解散」過去最多の4.97万件、赤字率は過去最悪、倒産増で「退出企業」も過去最多
損益別 赤字率が過去最悪
休廃業、解散する直前期の決算(判明分)は、2023年は損益(最終利益)が黒字の企業率は52.4%、赤字率は47.6%だった。黒字率が過去最低で赤字率は過去最悪だった2022年より、それぞれ2.5ポイント悪化した。 時系列でみると、2000年に調査を開始以降、黒字率は70%前後を維持していたが、2021年に初めて60%を割り込んだ。その後も悪化を続け、2023年は50%台をギリギリ踏みとどまった。 2021年以降、2ポイント程度の悪化が続いている。昨今の人件費や原材料価格の高騰を加味すると、2024年の黒字率は50%を割り込み、史上初めて赤字・黒字率が逆転する恐れがある。 ※直前期は、休廃業・解散から最大2年業績を遡り、最新期を採用した。
代表者年齢 60代以上の構成比、過去最高を更新
休廃業企業の代表者の年齢別(判明分)は、70代が最も多く42.9%を占めた。以下、80代以上が23.6%、60代が20.3%と続き、60代以上は全体の86.9%を占めた。60代は前年比1ポイント程度ダウンしたが、60代以上の構成比は前年より増加し、過去最高を更新した。 休廃業企業の代表者の平均年齢は72.0歳(前年71.6歳)、中央値は74歳(同73歳)だった。
法人格別 最多は株式会社
法人別では、最多は株式会社の2万1,027件(構成比42.2%)だった。次いで、有限会社の1万4,675件(同29.4%)、個人企業の4,835件(同9.7%)と続く。 株式会社が前年よりも減少した一方、比較的、企業規模が小さい傾向にある有限会社や個人企業などが増加した。
◇ ◇ ◇ 2023年の「休廃業・解散」企業は4万9,788件で、過去最多を記録した。前年比35.1%増の伸びを記録した倒産を含めると5万8,478件(前年比4.3%増)に達し、こちらも過去最多となった。 コロナ支援の縮小とともに進行する人件費や原材料価格の高騰などで、中小企業の生き残りは厳しさを増している。 2024年1月1日、令和6年能登半島地震が発生した。大きな揺れと津波に襲われた地域を中心に甚大な被害が生じている。人口減少が続き内需型産業は厳しい環境にあるが、漁業や観光資源が中心の地域では、支援のあり方や復興スピードによって企業の市場退出が相次ぐ恐れもある。 2023年の休廃業企業の赤字率は47.6%(前年45.1%)で、過去最悪を更新した。企業の大半は未上場で資本市場からの資金調達ができないだけに、最終赤字はそのまま内部留保の毀損に直結する。赤字が慢性化すると事業停止の段階で債務清算ができず、廃業を指向しても破産などの法的手続きを選択せざるを得ない。特に、赤字経営で社会保険料や租税公課の滞納が続いた場合、最近活用が進む準則型私的整理でも対応は難しく、結末は「破産一択」に等しい。 休廃業企業の業種別は、飲食業が2,188件(前年比15.2%増)、「アパレル小売」と呼ばれる織物・衣服・身の回り品小売業が729件(同15.3%増)、印刷・同関連業が422件(同19.8%増)などで増加が目立った。これらは市場競合に加え、時代の流れのなかでビジネスモデルが劣化したところに、コロナ禍で深刻な打撃を受けたケースも少なくない。 企業支援は大切だが、抜本的な事業再構築を伴わない安易な延命は負債の増大を招き、取引先や従業員への影響を広げる諸刃の剣になりかねない。今後の企業支援に一石を投げかけている。 また、2023年は業歴5年未満の休廃業、解散の増加も目立った。近年、スタートアップ企業を念頭に資本と負債の側面を持つ「ベンチャーデット」の活用に向けた取り組みが進むが、新設法人のすべてが株式公開や急成長、ユニークな事業モデルを有しているわけではなく、狭義のスタートアップには当てはまらない。こうした網の目から漏れる企業へハンズオンの支援も大切だ。