外国人の安定雇用には日本人の「平等意識」を捨てよ
このように、日本人と同等以上の対応を行っても、すべてが解決するわけではありません。相手の置かれた状況や価値観を理解し、解決策を模索することが多文化共生のカギだと田村氏は指摘しています。 ■給与だけを平等にすればよいのではない 外国人を雇用する現場でも同様の事例が見られます。ある外食企業では、ミャンマー人を特定技能資格者として雇用しています。彼らは非常に真面目で社内評価も高いのですが、日本人と同様に自発的に動くことや責任を持つことについての成長が見られませんでした。
現場責任者は、給与が日本人と同等以上であれば、彼らも同じように成長すると思い込んでいました。しかし、日本人と同様の給与を支払っても、彼らが求める目標や方法を明確に伝えていなかったことがわかりました。 日本人にとっては当たり前は、外国人にとっても当たり前とは限りません。現場責任者が求める理想像を具体的に伝え、その意味を正確に伝える。できない訳ではなく、理解できていなかっただけなのです。 外国人が求めること、不足していることを理解し、会社のルールを変えれば、外国人だけでなく、日本人の安定雇用にもつながり、ひいては日本を目指す外国人が増え、「選ばれる日本」になる1つの要因になりえると感じています。
実際に、そうした外国人の考えを汲み取り、会社のルールを変え成功している事例があります。その会社では、ミャンマー人エンジニアを正社員として採用しています。このミャンマー人は5年ぶりの一時帰国を検討するも、会社のルールで有給以上の休暇を取る仕組みがなく帰国を断念していました。 ミャンマーの地方出身の彼は、ミャンマー到着後も実家まで片道で丸1日かかります。日本からの飛行機移動も考えると、10日程度の休みでは家族と出会ってもすぐ帰らなければならず、無給でもいいので長めの休暇申請ができないか企業に相談しました。
そんな休暇を取られては、日本人従業員との不公平感が生まれる、だから許可できない――。とも考えたのですが、実際に現場で一緒に働く日本人からも「なんとか長めに休ませてあげられないか」と打診もあったことを受け、特別に長期の休暇を認めることにしました。 ■雇用主の「平等破り」に外国人は感謝する 現場を抜けられると困る点もあったとは思いますが、これまでの勤務態度や姿勢から、現場の協力もあって、家族と久しぶりにゆっくりと過ごすことができたようで、本人は企業の特別判断に非常に感謝していました。