1980年代に登場したものの、初代のみで消えた車3選
(2)マツダ「エチュード」
マツダの「エチュード」(1987年)は、はっきりいって、登場したときから「これは売れないのでは?」と、思わせるモデルだった。これこそニッチ(すきま)商品。 好調な販売を続けていたファミリアのラインナップで、足らないものはなにか? と、探した結果だろう。ファミリア3ドア(発売時の価格で最上級グレードでも115万円)のユーザー層が手を出さない、上のマーケットを狙ったモデルでもある(最上級グレードで165万4000円)。 エチュードの独自性は、2ドアのハッチバックボディにしぼったコンセプトがひとつ。スタイリングも特徴的だ。“逆カンチレバー”と、自動車デザインの用語でいうところの、Aピラーだけ車体同色にして、ほかのピラーはブラックアウトするデザイン手法が採用されていた。 ウインドウ面積が大きく見えるのはメリットだったかもしれないが、ルーフの前後長を切り詰めたことで後席空間は狭く見え、しかもピラーが見えにくいぶん、ちょっと弱々しい印象だった。 1.6リッターエンジンのみでほかに選択はなく、パーソナル性が求められるセグメントにありながら、スポーティさも強く感じられず、埋没してしまった感がある。1989年に生産終了と、あっというまの短い寿命だった。これも残念な1台だ。
(3)ダイハツ「アプローズ」
ダイハツのアプローズも、ある意味、印象に残るモデルだった。それまでの中型車はトヨタ車をベースにしていたが、ついに完全自社設計のふれこみでデビューしたのがひとつ。もうひとつは、まったく売れなかったからだ。 当初は欧州でも十分通用する性能、というのがセリングポイントだった。2470mmのホイールベースをもつシャシーに新設計の1.6リッターエンジン搭載。 エンジンは軽量化が目指されていて、クランクシャフトもカムシャフトも中空化し、シリンダーブロックはアルミニウム製だった。駆動方式も前輪駆動とビスカスLSDつきセンターデフをそなえたフルタイム4WDが用意されるなど、凝るべきところに凝る、といった姿勢も好ましいものだ。 欧州を意識したため、ボディは一見、独立したトランクをそなえたノッチバックだけれど、実際は大きなハッチゲートを備えていた。英国やフランスのクルマが好きなスタイルなので、発表された当時、「大胆だけどやるなぁ」と、感心したものだ。 実際に走らせると、エンジンのパワー感といい、足まわりとステアリングのしっかり感といい、印象のいいモデルだった。ところが、販売面では苦労したようだ。 私が思いつく理由は、デザインによるところが大きい。ひとことでいうと、パッケージングがよくて室内も荷室も広い。マジメだけれど、でも地味。内外装において華やかさがみじんもない。 悪いことに、まずオートマチック変速機とオルタネーターのリコール。そのあと、燃料系まわりの不具合が発生。ガソリンスタンドでの給油中、燃料の吹き返しがあってガソリンに引火など、いくつかのトラブルがあり、アプローズのセールスに悪い影響をおよぼした。 それでもアプローズが2000年まで生産された。メーカーの意地だったかもしれないけれど、やっぱり残念な1台になってしまった。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)