歴史に惹かれたのは、宝塚の黒紋付の「家紋」から。「上杉笹」の家紋を背負い、この夏上杉謙信として川中島にいざ出陣!
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第76回は「家紋にハマる」のお話です。 (写真提供◎越乃さん 以下すべて) 【写真】上杉謙信の陣幕と陣羽織。家紋は「上杉笹」 * * * * * * * ◆歴史と家紋に興味 歴史に魅了される「歴女」。 そんな言葉が流行った頃、私は男役で、歴史にもそんなに興味はなく、そんな言葉とは無縁な人でした。 ただ、日本物のお芝居やショーで刀を持つ時だけはちょっとワクワクしたものです。 何年か前に、仕事で栃木県の足利市に行きました。 空き時間に散歩をしていると、大きなお寺があり、ふと見るとお寺の屋根に見覚えのある家紋が。 「二引両紋」 丸の中に横線が2本入っただけの極めてシンプルな紋です。 音楽学校の合格発表の日に採寸をして作った宝塚の正装黒紋付。 その黒紋付には自分の家の家紋を入れます。 黒紋付に入れた私の家の家紋と同じ紋が、そのお寺の本堂や灯籠に付いていました。 調べてみると、そこは室町幕府を開いた足利氏の本拠地でした。 足利家の家紋は、「丸に二つ引両」の家紋。 「足利二つ引き」ともいうようです。 そしてこの引両は龍を表しているのだとか。 偶然知った家紋のルーツと龍に勝手に嬉しくなりました。 歴史と家紋に興味を持ちはじめたのはこの時からでした。
◆おのずと詳しくなっていった歴史 時を経て、宝塚を退団して10年、この夏上杉謙信の武勇と遺徳を称え行われている「謙信公祭」というお祭りで上杉謙信をさせていただくことになりました。 前回は甲冑の話を書きましたが、それはそれは素晴らしい甲冑、兜、刀、どれもワクワクするものばかりでした。 そして最後に広げられた上杉謙信の陣幕。 なんて素敵なんでしょう。 陣幕を見ただけで鳥肌が立ちました。 家紋は「上杉笹」。 笹に雀の文様です。 上部の2本線は、引両です。 上杉謙信は足利家の後ろ盾によって越後国主の地位を確立しています。 足利家の引両を与えられたのかもしれません。 今までに2度上杉謙信を演じ、おのずと詳しくなっていった歴史。 四つ菱の家紋も、真っ赤な甲冑も、すぐに宿敵武田信玄のものだとわかるほどに。