「イチゴ戦国時代」到来、世界の半分は日本がルーツ!?王国が考えるヒットの条件とは 各地で次々に生まれる新品種、開発者は権利保護のため無断栽培を警戒
▽県と農協がサポート とはいえ、とちおとめの需要も健在。若干酸味が強い分、甘いクリームなどとの相性が良いためだ。菓子店などからは引き続き、とちおとめを求める声も根強く、それに応えようとする農家も多いという。 栃木県内では、とちあいかをうまく作れるよう、県や農協などがサポートチームを作り、農家に指導も行っている。とちあいかの生産は5シーズン目。人見課長補佐によると、「とちあいか5年生の農家と1年生の農家で品質に差が出ないようにするため」で、「組織で対応できるところは栃木の強み」と自信を見せる。行政、農業団体、農家が手を携える一枚岩ぶりは王国が王国たるゆえんかもしれない。 ▽消費者に支持される品種 栃木県では、大粒で贈答に向く「スカイベリー」、県内の観光イチゴ園でだけ食べられる幻のイチゴ「とちひめ」や、夏場に収穫できる「なつおとめ」、ミルクのように白い「ミルキーベリー」などの品種もあり、年間を通じてどれかしらを味わえる。現在も新品種の開発が進んでいる。 消費者に支持される品種の特徴を畠山研究員に尋ねると「酸味がほどほどで十分な甘みがあるもの」という答えが返ってきた。かつては甘酸っぱいイチゴに練乳をかけて食べる人も多かったが、「イチゴだけで甘いと思ってもらえ、鮮やかな赤色で、果皮がしっかりして食感がある」品種がヒットの条件のようだ。
栃木県内では主要品種は5~6月まで収穫が続くが、畠山研究員は「もっと作期の長い品種の育成も目標」と話す。イチゴは夏の高温下で実を付けて大きくなるのは難しいというが、いずれ通年で味わえる品種が生まれるかもしれない。 王国・栃木県に追いつけ、追い越せで各地で品種改良が進むイチゴ。人見課長補佐は「良い品種を安定して出し続けないといけないという危機感はすごくある。一回失敗してしまうと、その印象を払拭するのが大変。今はとちおとめからとちあいかへの品種転換期。この2、3年が勝負」と気を引き締めた。