「イチゴ戦国時代」到来、世界の半分は日本がルーツ!?王国が考えるヒットの条件とは 各地で次々に生まれる新品種、開発者は権利保護のため無断栽培を警戒
冬から春にかけ、スーパーや青果店の店頭を華やかに彩るイチゴ。さまざまな品種が並び、目移りしそうだが、それもそのはず。農林水産省によると、日本国内では約300種もあり、世界全体の品種の半分以上が日本ルーツとの説もある。国内では、生産者の高齢化や後継者不足などから収穫量や作付面積は減少傾向だが、各都道府県などが品種改良に取り組み、新品種が続々誕生。まさに群雄割拠の「イチゴ戦国時代」の様相だ。(共同通信社=板井和也) "2024年問題"で…福岡県名産「あまおう」輸送に黄信号
▽イチゴは「伸びる品目」 滋賀県は2016年から5年をかけ、初めてのオリジナル品種「みおしずく」を開発した。「とてもジューシーで、口に含むと滴り落ちるぐらい果汁が出てくる」。開発に携わった県農業技術振興センターの松田真一郎係長が胸を張った。 品種改良の過程では、適度な酸味と強い香りを持つ「かおり野」と、甘みが強い「章姫」をかけあわせた約1600個体の候補から選抜作業を繰り返した。担当者は毎日200個以上のイチゴを食べ続けたという。みおしずくとともに最後まで候補に残った品種は「びっくりするほど甘かったが、完熟すると実が緩んでしまい、候補から脱落した」(松田係長)。苦労のかいあって、昨年12月からみおしずくの本格販売が始まった。 県農政水産部みらいの農業振興課の山崎博貴主査は「1月に2週間、県内の大型スーパーで試食販売会を実施したが、お客さんから『甘みも酸味もあってみずみずしい』と評価してもらえた」と安堵の表情を浮かべた。
松田係長は「県内産のイチゴはこれまで直売での販売がほとんど。直売主体だと売れ残りが出て農家の生活が成り立たない面もあった。農家の要望もあり、新たな販路として独自品種で市場出荷を目指すことになった」と開発の経緯を語る。全国的な傾向に反して、滋賀県ではイチゴの収穫量、作付面積ともわずかながら増えており、「伸びる品目」として白羽の矢が立った。 ▽県外持ち出しを禁止 関西圏は九州産のイチゴが多く出回り、特に量販店でイチゴを購入する消費者の多くは、県内産のおいしさを知らないという。「栃木県や福岡県のように大生産地化して…というのではなく、まずは県内で認知度をしっかり高め、おいしさを知ってもらう」(松田係長)と控えめだが、将来は海外輸出も見据える。 農水省によると、イチゴの輸出額は2012年に1・8億円だったのが22年には52・4億円と29倍以上伸びた。輸出量も95トンから2183トンと23倍近くに。だが高級ブドウの「シャインマスカット」のように、国内で開発されたブランド農産品が海外に無断流出し、栽培されるケースも後を絶たない。