過去にも虐待死が。法改正後、急ピッチで児童相談所開設目指す東京23特別区
今年3月に東京・目黒区で起きた5歳の女の子の虐待死が、社会に大きな衝撃を与えています。子供を守ることは社会や大人の責任であり、その最後の砦でもある児童相談所(児相)の役割は重要です。 児相はもともと、47都道府県と20の政令指定都市だけに設置が義務けられていました。対応件数の増加や業務の多様化・専門化といった社会の変化もあり、きめ細やかで迅速な対処ができるようにするべく2006年児童福祉法が改正。都道府県や政令指定都市のように必置ではありませんが、中核市でも設置ができるようになりました。これを受けて、神奈川県横須賀市と石川県金沢市の2市が児相を設置。兵庫県明石市が中核市で3番目となる2019年の児相開設を目指しています。 一方、首都・東京を支える23の特別区には児相を設置できる権限がありませんでした。都内で起きる児童虐待などの対応と児相の設置は、都の担当だったのです。今般、児童虐待の対応件数は年間10万人を上回り、きめ細やかな体制・機動的な対応が求められています。そうした社会状況の変化に応じ、2016年には東京23区でも児童相談所の設置ができるよう児童福祉法が改正されたのです。 中核市に遅れること10年。東京23区は、急ピッチで児相の設置準備を進めています。
22区は設置表明、練馬区は検討
2016年児童福祉法が改正されて、東京23区にも児童相談所を設置することが認められました。法改正を受け、最初に児相の設置を表明したのが中野区です。中野区は、2019年に23区初の児相開設を目指して準備を進めてきました。しかし、施設などの整備が間に合わないことを理由に設置を延期。現在は、2021年までに設置することを目指しています。 中野区にかわり、東京23区で児相のトップランナーを走るのは荒川区・江戸川区・世田谷区の3区です。この3区は、2020年までに児相を開設するべく準備を進めています。児相の設置を進めているのは、これら4区だけではありません。23区のうち22区が児相の設置を表明。唯一、練馬区だけが児相の設置を検討していません。 法改正で22区の動きは活発化していますが、特別区よりも一足早く児相を設置できる権限を認められた中核市の動きは芳しくありません。有識者の間には、中核市も児相を必置にすべきだとの意見もありますが、中核市の児相設置の動きは鈍く、特別区の迅速な動きとは対照的です。 「都と特別区の間では、1986年前後から児相の事務を移管することが議論されてきました。国と都による折衝の結果、権限移譲が困難であるとの理由から区は断念させられました。それでも特別区は繰り返し要望を出してきました。そうした移管の議論を積み重ね、準備を進めていた過去があるので、すぐに動ける態勢が整っていたのだと思います」と話すのは、特別区長会児童相談所事務局移管準備担当課の担当者です。 いったんは児相の設置を断念した特別区ですが、風向きが変わったのは2000年です。東京・江戸川区で凄惨な児童虐待死事件が起こったのです。この事件では、関係機関の連絡・調整に齟齬があり、それが最悪の結果を引き起こしました。その教訓から、きめ細やかで機動的な体制づくりが求められるようになったのです。