“山岳県”長野県で議論進む「高校生の冬山登山」指針
登山計画書の作成など安全対策を徹底
このため、安全確保の具体策として(1)冬山・春山の活動は基礎的な技術習得の範囲とし、登頂を第一目的としない、(2)活動場所は地形、斜度、積雪量などから判断して、雪崩発生の危険性がない、安全が確保できる場所に限定する。無線機などの通信の確保にも留意する、としています。 さらに、活動を予定している場所の事前の詳細な調査、登山計画書の作成、十分な装備を用意し、遭難者を探す無線機器のビーコンやスノーシャベルなども可能な限り携帯するとしています。 安全対策を確保するため、長野県高体連登山専門部か同専門部に加盟する高校山岳部などが行う冬山登山(冬から春にかけて主に雪上で行う活動)について県教委の定める安全指針を順守して実施するとしています。 第三者などのチェック機能として、(1)事前に保護者から書面で参加の承諾を得る、(2)登山計画書は学校長の承認を得た上で高体連登山専門部の事前審査を受ける、なども提言しています。
信州人のアイデンティティーにつながる
鈴木委員長は「登山計画書の作成はそれ自体、山を学習する機会であり第三者に見てもらうのも安全対策の狙いから。装備や通信も大切。さらに将来のために指導者の育成にも配慮をお願いしたい」と原山教育長に報告。 同教育長は「長野県は3000メートル級の山に囲まれている点で他の県とは異なる。その環境は信州人のアイデンティティーにつながっている」とし、報告書を受けて指針の取りまとめを進める考えを示しました。また、鈴木委員長から提案のあったビーコンなど安全対策の機器の貸し出しについても「検討してみたい」と述べました。 長野県は山岳県として全国から注目され、「山に登るために長野県に就職する」という若者も少なくありません。近隣国から高山のトレーニングとして北アルプスなどを訪れる登山者も多く、登山の指導や遭難防止の活動も高度なレベルを維持しています。 若者たちの冬山・春山の訓練は登山の基本の一つでもあり、これが制約されると将来の指導者が育たないという危機感が山岳関係者の間にあったことも否めません。今回の報告書は、山岳関係者、教育現場、行政が一体となって安全対策に取り組むことで登山教育の芽を摘まないように―との決意表明の意味も持っていると言えそうです。
-------------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説