“山岳県”長野県で議論進む「高校生の冬山登山」指針
今年3月の栃木県の高校生雪崩事故を受けて対応策を検討していた長野県教委の検討委員会が、山岳の専門機関の指導、審査を経れば高校の山岳部などが安全なエリアで冬山登山を実施できるとの報告書を提出しました。事故後に国が出した方針に沿って長野県も「高校生以下は、原則冬山登山は行わない」としつつも、全国有数の山岳県として「禁止だけが対策ではない」、「将来の安全対策のためにも訓練を通じ指導者を育成する必要がある」との強い意向を反映した内容です。これを受け県教委は10月中にも安全確保の指針を提示し、今シーズンに備える方針です。
「危険だから禁止する」だけではない観点
今年3月栃木県那須町で起きた登山講習会中の雪崩事故で高校生7人と教員1人の8人が死亡し、スポーツ庁と地教委は「高校生以下は、原則冬山登山は行わないよう指導してほしい」と市町村教委に通知しました。 同時に長野県教委は高校生の冬山・春山の安全確保の指針を検討する必要があるとして「高校生の冬山・春山登山における安全確保指針検討委員会」を設置。鈴木啓助・信大理学部教授を委員長に山岳会長、登山研修機関委員、山岳医、遭難防止関係者、高校長、長野県高体連登山専門部などの専門家8人で7月以来3回の会議で検討してきました。 鈴木委員長が10月5日、原山隆一・県教育長に提出した報告書は、「高校生の冬山・春山登山の意義」として、「日本有数の山岳県として自然と向き合い、自然を学び、自ら考え判断や行動ができる“自立した登山者の育成”を図る観点も大事」と指摘。しかし、「未成年で技術力や経験が不足する高校生の冬山登山の際は、安全確保のための指針を定め、すべての関係者がそれを順守することが前提」だとしています。 危険だから禁止するというだけではなく、十分な安全対策のもとに高校生たちの冬山訓練の機会を設け、自然に向き合うことや技術を習得することで山岳県に生きる意義を示したいとの意向です。