「汚物風船」の中身から見える北朝鮮の生活レベル…なぜ人間の排泄物ではなかった?識者分析
分断の根深さを“におわせる”事件だ。 北朝鮮が先月28日夜、ごみや汚物の入った大量の風船を韓国に飛ばした騒動。風船は韓国各地に落下し、少なくとも260個が発見されている。 【写真】金正恩の“プロパガンダMV”がTikTokで急拡散!世界のZ世代に大ウケ 「汚物風船」は、韓国の脱北者関連団体が北朝鮮領土に政権批判のビラを風船で送り込むことへの対抗措置だ。米ドル紙幣や、南側の発展した様子がわかる韓国ドラマ、K-POPなどを記録したUSBメモリー付きで飛来し、北朝鮮側も手を焼いているという。 北朝鮮に融和的だった文在寅政権時代の2020年、風船によるビラ散布を禁止する法律が韓国で制定。しかし、批判が集まり、政権交代後の23年に憲法裁判所で「表現の自由を過度に制限する」との違憲判決が下った。禁止法が効力を失って、再び批判ビラが大量に送り込まれ、激怒した北朝鮮が汚い反撃に出たのだ。 金正恩総書記の妹・金与正朝鮮労働党副部長の「汚物風船もまた表現の自由」との談話は憲法裁判所への痛烈な皮肉である。 ■「バイオテロもにおわせ」 気になる「汚物」の中身だが、紙クズや動物の糞尿などで、人間の排泄物は確認されていない。コリア・レポート編集長の辺真一氏は「風船の中身が北朝鮮の生活レベルを表している」と、こう分析する。 「北朝鮮の農村などでは、人間の糞尿はまだまだ大切な肥料。集団農場から家畜の糞尿を徴集したのでしょう」 韓国との経済格差が広がる中、北朝鮮にとって人糞は貴重な資源。韓国側に渡すわけにいかないのだろう。汚物風船を飛ばすとはバカげた作戦にも思えるが、過熱する半島情勢を考えれば、笑ってばかりもいられない。 「米韓合同軍事演習が活発に行われ、対抗するように北朝鮮もミサイル発射実験を次々に実施。2国間の緊張は非常に高まっています。ミサイルに比べたらまだ可愛い方ですが、『次は生物兵器を風船に載せることもできる』と暗にバイオテロをにおわせ、心理的にも牽制しています。汚物の回収には軍隊が出動し、韓国側に混乱と不安をもたらした。北朝鮮にとって成果は上々でしょう」(辺真一氏) 朝鮮戦争の休戦協定が結ばれてから来月で71年。積年の“においのもと”が取り除かれるのを祈るばかりだ。