API管理ニーズの高まりに対応を進めるKong、有泉氏社長に聞く日本の戦略
国内企業でのAI/生成AIの利用拡大を背景に、API管理へのニーズが高まっているという。API管理ソリューションを手掛けるKongは、国内で8月以降に複数の新規パートナーを獲得し、日本でのビジネスを拡大させる。パートナー戦略を中心とした今後の展開などについて日本法人代表取締役社長の有泉大樹氏と米Kong 事業開発担当シニアバイスプレジデントのKen Kim氏に話を聞いた。 Kongは2017年の創業だが、前身は2009年創業のMashapeになる。Mashapeは、APIマーケットプレースのビジネスを手掛けたが、当時はAPIの普及がそれほど進まず、ビジネスとしては一区切りを付けた。その後にMashapeのAPIゲートウェイをオープンソース化して多数のユーザーを獲得。その商用サポートやソリューションの拡充を現在Kongが行っている。日本法人はジャパン・クラウドと合弁で2023年11月に設立された(関連記事)。 7月に就任した有泉氏は、大塚商会やデル・テクノロジーズ、コンカーで20年以上にわたって営業や市場開発などの経験を持ち、中小~大企業顧客でのDX推進を多数支援してきたという。同氏は、「Kongは設立7年目ながら大手のクラウドベンダーに並ぶビジネス規模に成長しており、Gartnerの『マジック・クアドラント』においてもAPI管理部門で5年連続リーダーに位置付けられている」と強調する。 Kim氏によれば、顧客の約4割を金融が占めるといい、これはAPI利用が先行したFintech領域での実績があるようだ。現在は金融に加え製造やテクノロジー、通信、エンターテイメントなどの業種が拡大中とのこと。国内では、LINEヤフーがグローバルでもトップ3に入るというKongの顧客であり、インターネットイニシアティブ(IIJ)やNTTデータ、さくらインターネット、AI Insideのほか、大手の自動車や小売などが顧客になったという。 2022年には、デジタル庁がKong Gatewayを推奨APIゲートウェイに指定したことも顧客やパートナーの拡大に影響しているようだ。「当社は推奨をいただいた立場になるが、幸いにもパートナーやお客さまから要請をいただく機会が増えている」(有泉氏) 国内でAPI管理ニーズが高まる背景には、DX推進などに伴うマイクロサービスを用いたシステム開発やAI/生成AIの利用があるという。有泉氏は、「APIの種類や数が大幅に増加し、IT部門が把握していない“野良API”のリスクやセキュリティ脅威への懸念が強まっている。同時に、API開発における非機能要件への個別対応なども開発者の足かせになっている。そこでAPI管理ソリューションにより、APIの存在や利用状況の可視化と管理、開発の効率化が求められている」と説明する。 さらにKim氏は、グローバルではAPIのセキュリティが最大の関心事だと指摘する。現在インターネットアプリケーションの約80%がAPIを利用し、Kongのユーザーでは導入後1年でAPIが200%増加しているとのこと。AIでも大規模言語モデル(LLM)へのアクセスにAPIが事実上必須であるほか、基幹系業務システムとの接続でもAPI活用が進む。 こうした中で、APIを狙うDDoS(分散型サービス妨害)攻撃などがビジネスの継続性の面でも脅威になっており、「リスク管理やセキュリティ対策、ガバナンスの確保が課題になっている」(Kim氏)という。そこで2024年9月からAPIのセキュリティでTraceable AIと協業し、同時にAPIのオブザーバビリティ(可観測性)でDynatrace、リアルタイムデータストリーミングでConfluentとも協業を開始している。 同社は、2024年に日本での新規パートナーとしてNTTデータや電通総研、野村総合研究所(NRI)らを相次ぎ獲得した。Kim氏は、「グローバルではAccentureやAWS(Amazon Web Services)といったパートナーがいるものの、より日本市場に即したローカルパートナーの存在と彼らの力が不可欠だ」と述べる。 パートナー向け施策では、オンボーディングプログラムや、営業および技術者向けの認定資格プログラムなどを展開。技術者向けには全5回のトレーニング講座を実施している。Kim氏によれば、2025年3月には導入支援やデリバリー、サポートも含めたパートナー向けワークショップを開催し、これらの領域を対象とする認定資格制度を拡充していくという。 今後は、APIを高度に活用、管理したいとするユーザーへの商用版製品、サービス、サポートの訴求も強化する。数も種類も増え続ける一方のAPIを適切に利用、管理する上では、やはりAPI管理ソリューションが重要だとする。