実行犯が手口を暴露...東南アジアが拠点、アメリカで4万人が騙された「豚の屠殺」詐欺とは?
世界中で被害拡大中のオンライン詐欺。拠点のタイで犯罪に加担した男が実態を明かした
「中国のギャングに教わったんだ。どうやって信用されそうなプロフィールをでっち上げ、フォロワーを増やせばいいかを。そのトレーニングが終わってからは自分でフェイスブックやインスタグラム、LINEを使って適当なカモを探した」。 【動画】自称「キアヌ・リーブスそっくり」の男、性的暴行の罪で有罪...SNSで女性3人を誘い、犯行の様子を撮影 タイ北部出身のナリン(20歳)はそう告白した(証言者の安全のため姓は伏せる)。 タイの国家経済社会開発庁によると、同国でも電話やメール、SNSを通じた詐欺は飛躍的に増えている。昨年以降だけで7880万件もの事案が報告されており、近年の被害総額は20億ドルに上るという。 首謀者は中国系の場合が多いが、彼らは今やアメリカ人も標的としており、アメリカ政府も警戒を強めている。米司法当局は昨年、東南アジアを拠点とする組織的な詐欺集団にだまされるリスクが高まっているとして自国民に強い警告を発した。 事態は深刻で、昨年末には司法省が、サイバー詐欺で稼いだ約8000万ドルの資金洗浄に関与した疑いでアメリカ在住の4人を起訴している。 犯罪に加担したナリンは後悔の念から、サイバー犯罪の裏世界の実態を本誌に語った。彼はタイのチェンマイからチェンライに移動し、国境を越えてミャンマーのタチレクに到着。そこからオンライン詐欺の中心地とされる国境の街ラウカイに連れて行かれた。 友人の友人に勧誘され、金欲しさからミャンマーに渡ったナリンだが、到着した途端に何の仕事か気付いた。しかし身の危険を感じて逃げることもできず、罠にはまったのだと観念した。ナリンの役割はネット上でカモを見つけ、詐欺のネットワーク宛てにお金を送らせることだった。 ショッピーやラザダといった東南アジア系ネット通販企業の従業員に成り済まし、買い物ポイント詐欺を行うことも多かった。 いわゆる「ロマンス詐欺」にも手を染めた。別の人間に成り済まして相手に言い寄り、相手の恋心に付け込んで最終的には金銭を詐取する犯罪行為だ。 タイ警察のタトチャイ・ピタニラブート総監補によれば、「魅力的な写真を使い、言葉巧みに自分を信用させ、被害者に恋心を抱かせる。その上で、うまそうな投資話を持ち出す」のが典型的な手口だ。 ナリンによれば、ロマンス詐欺のターゲットは主として30歳以上だ。別の種類の詐欺では、オンライン通販をよく利用する女性や、20歳から25歳の若者がターゲットになる。 「若い被害者なら金銭的な損失からも立ち直れるだろうが、高齢者の場合は老後の資金を奪われてしまい、人生が破綻してしまうケースもある」。 タイ警察サイバー犯罪対策班のジェサダ・ブリンスチャートはそう言い、こう付け加えた。「事案はそれほど多くないが、影響が深刻なのでメディアでも大きく取り上げられる」