吉田鋼太郎「『おっさんずラブ』は戸惑いはあったものの、演じていて非常に面白い作品だった。今3歳の娘の花嫁姿を見るまでは、とにかく頑張りたい」
◆仕事の幅が大きく広がった 第3の転機は、2014年に放送された『花子とアン』の嘉納伝助役で大当たりを取ったことだろう。伝助の邸内で催した室内楽のコンサートにお煎餅を持ち込み、夫人の蓮子に注意されると、彼女もお煎餅が欲しいのかと勘違いするシーン。 蓮子の駆け落ち後に東京で巡り合い、元夫人との別れの挨拶に抱き寄せて額にキスするシーンなどが印象的だった。何より野卑に演じなかったのがいい。 ――ああ、僕もその2つのシーン、好きでした。野卑を前面に出しちゃうともともとの人物像が歪むと思って、わりと背筋を伸ばして演じましたね。大好きな役だったし、やりどころ満載でした。 たとえば、おでこにキスの件は、伝助はコンサートでのマナーにしてもナイフとフォークの使い方にしても、西洋の文化を蓮子から学んだ。それで最後に何か一つでも彼女にお返しができないか。それが西洋式のキスだと僕は思ったんで、リハーサルの時に監督に相談もなく、それをやってしまったんです。 そしたらディレクターたちが集まって、会議ですよ(笑)。十分ほど話し合って、「OKですから本番でもやってください」ということになりました。 とにかくこのドラマ以来、道行く人からは声を掛けられるし、仕事の幅も大きく広がりましたから、これはやっぱり第3の転機ですね。 その後、〈おっさん〉同士の恋愛を描いたドラマ『おっさんずラブ』に出演。鋼太郎さんは、田中圭演じる同僚の春田創一を愛する部長・黒澤武蔵を演じ、その意外性もあってか人気を博し、ドラマはシリーズ化・映画化された。役柄への抵抗感はなかったのだろうか。 ――放送当初は男同士の恋愛を真正面から取り上げたドラマがなかったので、世間はびっくりしたと思います。僕も脚本をもらった時は少し戸惑いましたけど、監督やプロデューサーの思考がはっきりしていたので、非常に面白いエンターテインメント作品になった。抵抗感どころか、演じていて非常に面白いし、大好きな作品のひとつです。
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