五郎丸が挑戦するスーパーラグビーの何がどう凄い?
ラグビーワールドカップイングランド大会の日本代表で副将だった五郎丸歩(29)が、スーパーラグビーのレッズへ加入する。シーズンは2016年2月からの約6か月おこなわれ、契約期間は1年。五郎丸は現所属先のヤマハ発動機に籍を置いたまま、国内シーズン終了後の2月7日、新天地へ合流する。 スーパーラグビーは、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカという世界ランク上位3カ国のトップクラブからなる世界最高クラスのリーグだ。16年からは、アルゼンチンのチームや日本拠点のサンウルブスなどが新たに加盟。18チームが4つのカンファレンスに分かれて王座を争う。2013年に田中史朗が日本人選手第1号としてハイランダーズへ入って以来、2015年までに8人の日本代表選手が門を叩いてきた(留学扱いは除く)。 関係者によれば、五郎丸がレッズから受け取る年棒(実働6ヶ月)は約1000万円とされる。他の在籍選手の報酬も、数億円にのぼる欧州リーグの一線級プレーヤーに比べると、やや見劣りするかもしれない。それでもリーグの質が担保されているのは、各カンファレンスでのクオリティーコントロールゆえだ。 ワールドカップを連覇した世界ランク1位のニュージーランドでは、代表の選考対象は国内でプレーする選手のみとなっている。厚遇を求めて他国チームへ完全移籍する際は、ナショナルチーム入りを諦める必要があるのだ。同2位で今回のワールドカップを準優勝としたオーストラリアも、基本的にはニュージーランドと同様の方針を掲げる。そのため、スーパーラグビーに登録する選手の才気は折り紙付きである。 各クラブのチーム力に目を転じれば、特に上位陣の充実ぶりは明らかだ。ジャパンの主将でチーフス(2014年に優勝)加入1年目からレギュラーとなったリーチ マイケルは、ラグビー王国ニュージーランドでの緊張感をこう表現する。 「トレーニングの空気が試合と一緒。超ハード。誰かがミスしたり、ターンオーバー(攻守逆転)が起こってもそのまま(実戦練習を)続ける。すべてが刺激になっています」 2015年にチャンピオンとなったハイランダーズで4シーズン目に突入する田中は、「皆の考えがクリア。ひとつの方向を見ている」と証言する。ダブル主将のベン・スミスとナシ・マヌが中心となって、トニー・ブラウンアシスタントコーチらが打ち出す戦略術をチームへ涵養させているようだ。さらにニュージーランド代表のアーロン・スミスとスクラムハーフの定位置を争うなか、30歳の田中はこうも感じたという。 「アーロンたちのラグビーに賭ける思いを知ると、若いうちにもっと(ハードな練習を)やっておけばと感じる。知らんままのほうがよかった、とも」 今度のワールドカップの初戦で過去2回優勝の南アフリカ代表とぶつかった際には、「スーパーラグビーのファイナルの時にもこういう雰囲気を味わっている」と述懐した。会場のブライトンコミュニティースタジアムで、過緊張にならず身体を張れた。この日は34-32のスコアでジャパンにとっての大会24年ぶりの勝利を挙げ、マン・オブ・ザ・マッチに輝いている。 そう。スーパーラグビーに挑めば、日本とは違った経験ができる。結果、選手として有形、無形の力を蓄えられるのだ。