作家・背筋から見た昨今の「モキュメンタリー・ブーム」…「嘘」とわかっていても怖いのはなぜか
ここ数年、モキュメンタリーホラーが大きなムーブメントになっている。 そもそも、モキュメンタリーとはどのようなものを指すのだろうか。デジタル大辞泉(小学館)を引用すると、以下のように定義されている。 【写真】閲覧注意…『進撃の巨人』の元ネタになったとも言われる衝撃事件 「《mock(まがいもの)+documentary(実録)から》ドキュメンタリーの手法を用いて、事実であるかのように表現されたフィクション作品。また、その手法。フェイクドキュメンタリー」 “あくまでフィクションである”ということが提示されるが、現実にあったかのように事件が起きたり、取材やニュースを見せたりすることで現実と虚構の境界線を曖昧にしていて、それが絶妙なリアリティを持ち、人気ジャンルの一つになっている。 2021年にYouTubeで配信された雨穴氏の「変な家」が書籍化・映画化され、話題になったことは記憶に新しい。また、そのほかにもYouTubeにはモキュメンタリー形式の映像作品が数多く存在しており、再生回数も非常に多く回っている。 さらに、テレビ放送においても特別番組として今年4月に放送されたテレビ東京の『TXQ FICTION』第1弾「イシナガキクエを探しています」は放送直後からSNSを中心に話題となり、多くの考察が飛び交った。YouTubeでの配信が解禁されると、第1弾の再生回数は100万回再生を超え、その注目度がうかがえる。
20年以上前から注目はされていたのになぜ
過去のモキュメンタリーホラーの代表的な作品と言えば、1999年に公開されたアメリカ映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」だ。作品の概要としては、魔女伝説を題材にしたドキュメンタリー映画を撮影するために森に向かった3人の大学生がそのまま消息を絶ってしまい、1年後に彼らが撮影したと思われるフィルムを発見したのでそのまま編集して映画化した、というもの。 6万ドルという映画にしては超低予算かつ少人数で制作されたこの作品は、しかし全世界興行収入2億4050万ドルを記録したという。 日本では白石晃士監督の映画「ノロイ」(2005年)や小野不由美氏の著作『残穢』(新潮社、2012年)が2016年に映画化されるなど、国内でも以前からモキュメンタリーホラー作品は隠れた名作として一定の人気を誇っている。 本来は映像作品に対して用いられるモキュメンタリーという言葉だが、最近は文章作品においても注目が集まっている。 「このホラーがすごい!2024年版国内編」では小説投稿サイト「カクヨム」にて背筋さんが“ある場所にまつわる怪談”として投稿していた「近畿地方のある場所について」が1位に選ばれた。 さらに、冒頭でも触れた雨穴氏の「変な家」については、そもそもウェブメディア「オモコロ」にて2020年に公開された記事が初出でもある。YouTubeで人気を博している「フェイクドキュメンタリーQ」も書籍化され、映像・文章ともにモキュメンタリーホラーが大きなブームとなっていることは間違いない。 しかし、20年以上も前からあったモキュメンタリーホラーが今になって流行り始めたのか、疑問が湧く。 こうした流れについて『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)の著者である背筋さんに取材を敢行した(以下「」内は背筋さんのコメント)。