遊園地閉園後の観覧車、「海外移籍」で人気者に 丁寧なメンテナンスで喜ばれる日本製
宮島(広島県廿日市市)や似島(広島市南区)が浮かぶ広島湾から陸のビル街までパノラマで一望できる。商業施設広島マリーナホップ(西区)の突端にある遊園地「マリーナサーカス」内にあるシンボルの観覧車。広島マリーナホップの12月1日の営業終了にともない、この風景も見納めとなる。ただ、耐用年数はまだまだ余裕。この観覧車はどうなるのだろうか。実は過去に国内で活躍した観覧車の中には、別の場所で「人気者」になったケースもある。 【写真16枚】国内の遊園地で活躍していたころの観覧車と、「海外移籍」後の観覧車
「海辺の観覧車はさびがたちやすいけど、マリーナサーカスのは丁寧に手入れされてきたんでしょう」。国内の観覧車について研究する福井優子さん(77)=大阪市=はそう推し量る。「まだ20年。第二の人生、頑張ってほしいですよね」 遊園地閉園後の観覧車は、どんな「セカンドキャリア」を送っているのか。例えば1998年に閉園した「呉ポートピアランド」(呉市)の観覧車「ジャイアントホイール」。高さ約85メートルで48台のゴンドラを備えていた。閉園後はスペースワールド(福岡県北九州市、2017年閉園)で「スペース・アイ」の名で活躍した後、2020年春からはカンボジアの遊園地で稼働している。 「海外移籍」を仲介したのは、マリーナサーカスなど全国5カ所で遊園地を管理、運営するシーキュー・アメニック(香川県高松市)。四宮武義会長(73)は17年、首都プノンペンの商業施設に遊園地を設けたのを機に、観光で世界遺産のアンコールワット遺跡を訪れた。「ここに観覧車を建てたら、街を見渡せてめっちゃええやん、って」。スペース・アイを購入、解体して現地で再建。遺跡がかすかに見えることから、その名を「アンコール・アイ」に変えて再出発を果たした。
「ヒロシマナタリー」(現広島県廿日市市、96年閉園)の観覧車はどうか。福井さんによると、99年にベトナム・ホーチミン市の遊園地に移設された。現在は閉園となり、解体されたとみられる。 福山市にあったボウリング場「ビッグボウル福山」に2013年まであった観覧車は現在、インドネシア・ジャカルタの商業施設の屋上に。高さ約50メートル、地上高72メートルと、国内で最大の大きさを誇る。 福井さんによると、かつて広島県内では、デパートの屋上なども含め約10カ所に観覧車があったという。マリーナサーカスの閉園で、県内に残るのはみろくの里(福山市)だけになる。「安全性やその丁寧なメンテナンスから、日本製は喜ばれる。日本では客足が伸びなくても、東南アジアで列をなしていますよ」と福井さん。20年間愛されたマリーナサーカスの観覧車もまた、どこかで次世代の子どもたちを楽しませるに違いない。
中国新聞社