「格差シャッフル」が起こらなくなった日本。恋愛・結婚格差はなぜ起きているのか?【牛窪 恵さん】
「格差のシャッフル」が起こりにくくなった
――SNSやアプリを通じた出会い、ネットを通じた他者との接触は増えているけど、リアルの生活で恋愛に繋がるような出会いや深い関わりは減っているわけですね。 牛窪:あとは、出会いにもかなり“偏り”が出てきています。昭和の高度経済成長期~バブル期ぐらいまでは、結婚によって「格差のシャッフル」が起こりやすい環境でした。例えば、高卒や短大卒などのいわゆる高学歴とは言えない女性でも、東大や早稲田、慶應卒の高学歴男性たちと職場恋愛をしたり、周りからの紹介で結婚できたり、というケースも一定数存在しました。 でも今は、男性も女性も、自分たちと同じような学歴や生活レベルの相手でないと結婚したがらないんです。東京大学と東京工業大学の男性たちにグループインタビューをしたことがありますが、「親や親戚でも、高卒や短大卒の女性と結婚した人はいない」「学歴や家柄が違いすぎる人とは最初から話も合わない」と、皆さん堂々と言い放っていました。 情報が溢れる社会では、最初から選択肢を絞るために「条件に合わないと思う人」を自動的に排除する傾向にあります。よくよく話せば深い関係を築ける相手かもしれないけれど、でもそこまで目配りするとキリがないので、最初からフィルタリングをせざるを得ないんです。コンビニでも3秒どころか1秒足らずで商品を絞り込むぐらい、現代人のフィルタリングは顕著になっています。 そんな中でも、例えば信頼できる誰かやAIなどが、「この人は、見た目は好みじゃないかもしれないけど、実はあなたにピッタリの性格だから、会ってみたら?」とおすすめしてくれれば、まず条件でふるいにかけるような現状も、少しは変わるとは思うんですけどね。
取材・文/ヒオカ 構成/金澤英恵
牛窪 恵