海外で同性婚、偽装結婚と疑われ「悔しくて泣いた」 日本では夫婦と認められなくて不安に…法の壁と戦う日仏カップルの思い
婚姻届の受理求め家事審判申し立て
フランスで同性婚をした日本人と仏人のカップルが、日本で婚姻届が受理されないのは違法として、受理を求める家事審判を神戸家裁尼崎支部(兵庫県尼崎市)に申し立てている。性的少数者を巡る法律問題に詳しい長野県安曇野市の宮井麻由子さん(44)ら長野県内の弁護士4人が支援。カップルは「私たちの存在や思いを知ってもらい、理解が広まってほしい」と話し、同性婚が日本でも公に認められることを願っている。 【写真】フランスで同性婚をした礼さんとコガリさん
30代の2人、フランスで2018年に結婚
申し立てをしているのは、ともに30代で神戸市出身の渡辺プロスペル礼さんと、仏人の渡辺プロスペルコガリさん。2016年からフランスで生活しており、18年に結婚した。フランスでは13年から同性婚が認められていた。互いに「妻」と紹介する。
出会いは演劇学校
出会いは15年、留学先の英国の演劇学校だった。「コガリは授業を受ける姿が真剣で、ケラケラと笑うところも好きだった」と礼さん。コガリさんも礼さんを「かっこいい」と思った。卒業とともにそろってフランスへ。法律婚と同等の社会保障を受けながら共同生活し、一緒に演劇関係の会社を設立した。
法律に守られると感じ結婚
結婚の契機は18年、書類の不備で礼さんのフランス滞在許可が下りず、国外退去命令が出たことだった。最終的に許可は下りたものの、「法律婚なら長く住み続けられるなど、法の保護を強く受けられる」と実感したという。 差別的扱いはフランスでも受けた。結婚しようとすると「偽装結婚」を疑われ、役所で1人ずつ尋問された。相手は朝ご飯に何を食べるのか、きょうだいの名を言えるか…。国際婚でなければ必要のない手続きに「悔しくて泣いた」(コガリさん)。
日本滞在中に病気やけがをしたら…
苦労もしながら手に入れた家族関係だったが、礼さんの母国で家族と認められない状態にも不安が募った。日本滞在中にどちらかがけがや病気をした際に治療に立ち会えないかもしれない、いずれは迎えるつもりの子どもとの親子関係も認められないかもしれない―。同性婚を巡る情報を集めるうち、宮井さんらとつながった。 日本の戸籍法は日本人が海外で結婚した場合の届け出を義務付ける。そこで2人は昨年6月、礼さんの本籍の尼崎市に婚姻届を提出した。だが結果は不受理。不受理証明書には「憲法および民法において、同性間の婚姻の規定がないことから、無効な婚姻と解される」とあった。