「退院させていただきました」「円満退職させていただきました」はへりくだりすぎ!?ただし何でもかんでもNGというわけではなく…
◆「退院させていただきました」はへりくだりすぎ代表 「させていただく」」は、へりくだりすぎ表現の代表格。 あちこちで、使いすぎだと指摘されながらも、その人気は衰えません。前項と同様に、次の「させていただく」も盛りすぎです。 退院した人が出社して会社で報告する場面 「おかげさまで順調に回復しまして、昨日退院させていただきました」 会社を退職した人がSNSで報告する場面 「円満退職させていただきました」 「させていただく」を『広辞苑第七版』(岩波書店)で引くと、こうあります。 <相手の指示を頂戴してするという卑下した形で自分の動作を謙遜した意を表す。最初、上下関係を強く意識する社会で使われ、第二次大戦後一般に広がった言い方> 退院を許可したのは主治医、退職を許可したのは会社です。聞き手に許可をもらったわけではないのに、卑下した形とはへりくだりすぎです。 前出の傍線部分は「退院いたしました」「円満退職いたしました」とすべきでしょう。 言う前に「『いたします』は立派な敬語」と頭の中で3回唱えるとスムーズです。
◆使う場面によってはNGではないことも… こう書くと、一様に「させていただく」を使ってはいけないと早合点する人もいるでしょうか。 しかし、次のような場面では、絶対にダメとは言い切れません。 目上の人が集まる会などを途中で退席する場面 「恐縮ですが、ここで失礼させていただきます(いたします)」 結婚式の出欠に返信ハガキで答える場面 「出席させていただきます(いたします)」 いずれも許可は不要ですが、許可を得てそうすると見立てているわけです。 つまり、「いたします」でも使えますが、「させていただきます」を使っていけないとまでは言えないのです。何でもかんでも「させていただく」がNGではありません。 他人の「させていただく」に寛容になることも心がけたいですね。