フランス代表の新10番候補ラヤン・シェルキ21歳 ジダン、グリーズマンの系譜を継げるか
【両足を同じように使えるタイプ】 見た目はリオネル・メッシに似ている。足下に吸いつくようなドリブルとキレのあるフェイント、少し背中を丸めた姿もよく似ている。身長はメッシより6㎝高い176㎝だが、小柄な技巧派だ。 面白いのが、完全な両足利きだということ。ドリブルは左足を多く使っていて、それもあってメッシを思わせるのだが、実は右利きだそうだ。確かにセットプレーは右足で蹴っていて、パワフルな右足のシュートも決めている。 両足を同じように使えるタイプはこれまでにもいたが、ここまでどちらが利き足かわからない選手は珍しい。フランス代表にはウスマン・デンベレという、やはりどちらが利き足なのかわからない選手がいるけれども、ナチュラルに両足が使えるのは極めて希少だ。 右ウイングあるいはトップ下としてプレーする。サイドもできるが、中央のほうがシェルキのキープ力やパスがより活きる。高度なテクニックとともにインスピレーションの冴えもすばらしく、まさに「10番」のタイプ。 リヨンの育成を経て、15歳の時にはBチームでプレー。16歳でトップへ昇格。体幹の強さを感じさせるプレーぶりで、早熟なタイプだったようだ。ただ、育成年代の代表チームで活躍しながら、まだA代表に呼ばれていないのは少々気になるところではある。
【開花しなかった「10番」もいる】 ハテム・ベン・アルファは、飛び級でクレール・フォンテーヌ(国立育成センター)に入った逸材だった。その才能は同年代のメッシと比較されるほど。しかし、リヨンからマルセイユに移籍して勢いが止まり、カルト的な人気はあったがフランス代表でも活躍できないままだった。 ベン・アルファと同期のサミル・ナスリも「ジダン2世」と呼ばれた才能の持ち主。アーセナルやマンチェスター・シティで活躍したが、フランス代表にはやはり定着せず。 ベン・アルファ、ナスリの共通点は規律の欠如である。才能は文句なしだったけれども、ナスリは監督批判で外されていて、ベン・アルファはコンディションがあてにならなかった。フランスは個人主義の国と言われているが、そのぶんチームの規律はけっこう厳格で、和を乱すような存在は受け入れられない傾向がある。 ベン・アルファがマルセイユでプレーしていた時の監督はディディエ・デシャン。当初は起用法に不満を漏らして干されている。ナスリはフランス代表監督となったデシャンを批判して招集外となった。 デシャン監督がフランス代表を率いて12年。その間、2018年ロシアW杯優勝、2022年カタールW杯準優勝。規律を乱す選手には容赦がない。出自も個性もさまざまで、自己主張の強い選手たちをまとめるには、デシャンの手法がおそらく正解なのだろう。シェルキがどういう性格かはわからないが、10代で天才ともてはやされた先輩たちの轍を踏まないことがまずは前提になる。