本木雅弘との32年ぶりの共演は「ほぼ初共演のよう」 小泉今日子が『海の沈黙』で感じた価値観に“自信”を持つこと
偽物でも本当でも、自分の心が動くのは何か
――お互いに「もう会うことはない」と思っていた、かつての恋人・竜次との再会は、安奈にとって幸せだったのでしょうか。 小泉 安奈と竜次の間には、恋とか愛という次元を超えた澱のようなものが感情の一番奥底にあって、それがふたりの人生にずっと影響してきたのではないかと思います。 安奈が竜次に「ありがとう」と言うシーンがあります。安奈は心の奥底に感情を閉じ込めながらも、ずっと竜次を心配していただろうし、心のどこかで竜次のようなアウトローな生き方を認めてもいた。だから、竜次らしい生き方をそのまま貫き通した彼に、「ありがとう」と声をかけたのだと私は解釈しています。 ――完成した映画をご覧になって、どのように思われましたか? 小泉 偽物でも本当でも、自分の心が動くのは何かということを、あらためて考えるレッスンが、私たちみんなに必要なんじゃないかと思いました。 とくにいまはインターネットやSNSで情報が左右される時代です。映画のなかで、萩原聖人さん演じる美術館の館長・村岡が「私はあの絵に心底惚れ込んでおりました。それはあの絵が贋作であると指摘された今も変わるものではありません」と訴える場面がありますが、確かに、誰かの評価や世の中の状況で値段や価値が変わっていくって、不思議ですよね。人や社会がどう判断しようと、自分が美しいと思うものに絶対の自信が持てる。そういう「本当の価値を知っている人」が必要なのではないかと感じました。 ――小泉さんは人の意見よりもご自身の判断を重視できるタイプですか? 小泉 そうですね。私は子どもの頃から、個性を尊重してくれる家庭で育ったので、10人のうち9人が「右がいいよ」と言っても、自分が「絶対左がいい」と思ったら譲らないところはあると思います。 もちろん、情報に流されてしまうこともありますが、たとえば家を購入できるくらいの値段を出してすごい美術品を買ったとしても、それを飾るに値する家がないのなら、たまに美術館に行って観るほうがいいんじゃない、って思いますよね。そういうふうに「自分だったらこうかな」と言えるものをしっかりと持つことがこれからの世の中では必要なんじゃないかなと思います。 衣装クレジット ニット 88,000円、パンツ 36,300円/CINOH(MOULD 03-6805-1449) ピアス 35,200円/PLUIE(PLUIE Tokyo 03-6450-5777) リング 右・人差し指 19,800円、薬指 29,700円、左 40,700円/Rieuk(info@rieuk.com)
相澤洋美