乳がんのマンモグラフィー、超音波検査の追加は「根拠不十分」と米専門委員会、反発も
検査法の研究は比較的進んでいない
マンモグラフィーを補足する検査についての初期の研究は20年以上前に行われている。だがこの間に、追加検査の有効性をUSPSTFに納得させるだけの研究は行われなかった。 実は、他の多くの疾患と比べると、乳がん研究には豊富な資金が費やされている。2023年に医学誌「The Lancet Oncology」に発表された論文によれば、世界的に見ると、2016~2020年の間に乳がんは他のどのがんよりも多くの研究資金を獲得しており、総額は約27億ドル(約4200億円)にのぼるという。ただし、これらの資金の大部分は、検査法の研究ではなくがんの生物学的な研究に使われており、薬物治療、免疫療法、手術法の研究がそれに続いている。 USPSTFは、今回の勧告にあたり、補助的な検査の影響を追跡した少数の無作為化比較試験を評価している。 例えば、日本の研究チームが2015年に医学誌「The Lancet」に発表した論文では、どの乳腺濃度の人も含まれる女性約7万人を、超音波検査とマンモグラフィーを併用する群と、マンモグラフィーのみの群に半数ずつ無作為に分けたところ、両群で「中間期がん」の発生率の差は見られなかったとしている。 中間期がんとは、前回のがん検診で異常が見つからなかった人が次の検診の前に診断されるがんのことで、検査法の有効性を示す指標とされている。この研究は現在も進行中で、検診の回数が増えれば結果も変わってくる可能性がある。 オランダでも、マンモグラフィーが陰性だった高濃度乳房の女性にMRI検査を行う複数年の研究が行われており、これまでに2回目の検査(1回目から2年後)を受けた約3500人の女性の結果が発表されている。 2回目のMRI検査では、1000人あたり約6例のがんが追加で検出された。しかし、この2回目の検査では、MRIでは陽性になったが最終的にがんではなかった症例も1000人あたり約26例あった(1回目では約80例)。このような偽陽性では、本来なら不必要な追加検査が必要となり、検査を受ける女性を不安にさせてしまう。 ウォン氏によれば、検出率が高い検査法が必ずしも有益だとは限らないという。例えば、補助的な検査で見つかったがんの進行が遅い場合は、次回の定期的なマンモグラフィー検診で発見されても十分効果的な治療ができた可能性が高い。 「よく見れば見るほど、より多くのがんが見つかるものなのです」とウォン氏は言う。「しかし、補助的な検査で陽性になったおかげで患者の寿命が明らかに伸びたという決定的な恩恵があるとは、まだ言えないのです」