ポピュラーな曲が数十秒にアレンジ 日常生活の一部「駅メロ」のカリスマ音楽家が語る、ご当地駅メロが地域を活性化させる理由
依頼者たちの思いを汲んで生み出されるご当地駅メロ
2015に開業した北陸新幹線の長野から金沢間では、各駅で地域色豊かな発車メロディーが採用されています。 道中の上越妙高駅では、上越市出身で「日本の音楽教育の母」とも言われる小山作之助氏が手掛けた、『夏は来ぬ(なつはきぬ)』が選ばれました。この編曲を担当したのも塩塚さんです。 塩塚「『夏は来ぬ』だけ、特別に何かを考えて作曲するということはありません。ほかの曲と同じで、指定された楽曲の魅力をしっかりと伝えたうえで、気持ちよく乗車、もしくは下車していただけるような音楽を作ることを考えて作曲しています」 塩塚さんは謙遜しますが、上越市のホームページには、下記のコメントが掲載されています。 「『夏は来ぬ』は、子どもからお年寄りまで世代を越えて愛されるメロディーであり、ホームにこのメロディーが流れることで駅全体の雰囲気を明るくしてくれるとともに、メロディーを通じて旅行者にはこの地域の美しい自然や文化、そして人々の優しさを印象づけることができる曲であるとしてJRに採用を提案していました」 (※上越市の北陸新幹線「上越妙高駅」の発車メロディーのページより抜粋) 実際に上越妙高駅に赴き、現地で自然や文化に触れて作編曲のイメージを膨らませたのかと思いきや、塩塚さんからは予想外の答えが返ってきました。 塩塚「駅メロを制作するときに、現地に取材を行くことはありません。与えられた音楽を聴いたうえで、曲のどの部分を使ってほしいのか、どういう風な音楽にしてほしいのか、説明を受ければ編曲のイメージは固まるので、現地に取材に行く必要はありません。 希望をきいたうえで、元の音楽のメロディーを活かして何回聴いても飽きない、そして気持ちよく乗り降りができるような駅メロに、僕がアレンジしていくわけです。
最終的にタイプの異なる駅メロのデモを複数バージョン作って、その中から最もいいものを選んでもらっています。 最後に選ばれたバージョンを修正することはありますが、細かくディレクションされることはほぼないですね。 小川さんが、クライアントとの打ち合わせの中で曲の仕上がりイメージを固めてくれ、それを僕に伝えてくれるので、ほぼ間違いないものができるんです」 執筆:黒田知道 バナーイラスト:viaductk / GettyImages デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio) 編集:奈良岡崇子