子どものSNS誹謗中傷対策 日本では何が必要か オーストラリアは16歳未満「禁止」
子どもたちによる、ネットやSNSを使った誹謗中傷が深刻さを増している。オーストラリアでは、16歳未満の「SNS禁止」を決めた。SNS時代に何ができるのか。AERA 2024年12月23日号より。 【写真】「女子中学生が送った心の傷をえぐるメールの中身」はこちら * * * 子どものSNSを巡っては11月下旬、オーストラリア議会が16歳未満のSNS利用を禁止する法案を可決した。背景には、SNSを通じ子どもが暴力的な動画などの有害コンテンツに接したり、いじめや性被害に遭う事態が相次いだりしたことがある。利用禁止を法制化することで子どもの心の健康を守る狙いがあるという。 SNSは、子どもたちにどのような影響を与えるのか。1日2時間を超えるSNS使用は、うつのリスクを高めるなどとも言われる。 脳科学者で諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀さんによれば、近年の研究で、SNSを長時間使うことで表れるという発達問題や不安、うつなどは「結果」ではなく「原因」、もしくは「相互作用」だという見方が強くなっていると言う。 「米国で22年、9歳から12歳まで1万人弱の子どもを対象に、認知機能に関わると考えられる遺伝的差異のデータと親の社会経済的地位の影響を考慮し、ゲーム時間が脳の認知機能に与える影響を調べる2年間の追跡調査を行いました。その結果、ゲーム時間が長い方が認知機能は高まり、SNSなどを使っていた時間とYouTubeなどを受動的に視聴する時間は、認知機能に影響しないことが示されました」 ■認知機能に悪影響なし つまり、スクリーンタイム(画面を見ている時間)が長くても認知機能に悪影響はなく、むしろ好影響を与え得ることがわかったという。 ではなぜ、スマホなどデジタルメディアに接している時間が長いと、子どもの脳の働きに悪影響が生じるという研究が少なからず報告されてきたのか。 「理由の一つとして、そうした研究は『ワンショット研究』といい、いま起きていることと脳の活動の相関関係を見ているだけで、認知機能に影響を与える遺伝要因や親の社会経済要因といった因果関係まで調べたものではありません」(篠原さん) 子どもたちをSNSトラブルから守るにはどうすればいいか。 篠原さんは、全てのステークホルダー(利害関係者)に責務ある対応を求める、「レスポンシブルSNS(責任あるSNS)」の考え方が必要だと説く。