子どものSNS誹謗中傷対策 日本では何が必要か オーストラリアは16歳未満「禁止」
「例えば、SNSを運営するメタやアップルといったプラットフォーマーが、SNSによるいじめや他者を誹謗中傷したりすることに対し、規制をかけていく仕組みを早急に作らなければいけません」 さらに、子どもたちに向けた啓発や教育、親たちへの予防や指導。不安やうつ、衝動性を抱えやすい子どもはSNSでは攻撃性が表に出やすくなるので、そうした子どもを早期発見し、啓発や教育、問題化防止のサポートも重要になってくると話す。 「SNSはすでに一つの社会を形成しています。オーストラリアのように『禁止』するのではなく、社会のリスクに対するのと同様、取り締まりを行う警察機能や相談機能などをつくりあげていくことが必要です。日本にはプラットフォーマーの主体となる企業がありませんが、国が主体的責任を追う形にすればできると思います」(篠原さん) ■5月に情プラ法成立 ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんも、SNSの禁止は実効性が乏しく、様々な手段を尽くして子どもを守っていくことが大切だと話す。 「まずは、親子でしっかり話し合ってネットリテラシーを高めてください。相手を傷つけるようなことを送ってはいけないし、場合によっては14歳でも逮捕される可能性があると伝えることも必要。新聞など、情報の偏りが少ない“フラットな情報”を伝えることも大切です」 そして、5月に成立した、SNSでの誹謗中傷に対しプラットフォーム事業者に対応の迅速化を義務づける「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」のように、問題にあわせた法整備を行っていくことが重要になっていくという。 「一つ一つ対策をとっていくことで、SNSのトラブルや被害はかなり減らせます」(高橋さん) 東京・池袋で起きた車の暴走事故を巡って、女子中学生から殺害予告を受けた松永拓也さん(38)さんは、「SNSは使い手の心一つで凶器になる」と話し、SNSでの誹謗で苦しみ命を絶つ人をなくしたい思いから、誹謗中傷対策の必要性も訴えている。 「短期的な視点と中長期的な視点の両面で考えるべきだと思っています。短期的には、誹謗中傷をした人を罰する法律の強化。中長期的には、SNSの良き使い手になるデジタル教育や道徳教育が大事です」 そして、ネットやSNSを使う子どもたちに向けこう話す。 「画面の向こうにはあなたと同じ心、同じ命を持った人間がいます。そのことをよく考え、送信ボタンを押す前に、この言葉が画面の向こうにいる人を傷つけないか、一度立ち止まって考えてほしい」 (編集部・野村昌二) ※AERA 2024年12月23日号より抜粋
野村昌二